2005年5月8日(日)
近年、経済のグローバル化にともない、日本国内における産業の空洞化が急速に進行している。長引く不景気によるリストラや就職難の影響で、全労働人口に占める非正規社員の割合も劇的に増加した。終身雇用制度の崩壊と転職型労働社会への流れはもう誰にも止められないところにまできている。
これまでの社会の仕組みが大きく変わろうとしていた2001年末、僕は日系企業が多数進出している東南アジアに関する専門知識があれば、日本国内のおける産業の空洞化にも十分抗えると考え、会社を辞めてタイへ留学した。そして、もっとも高度な外国人向けのタイ語教育を行っている
こうして留学3年目を迎えたいま、先行き不透明なこの国で安定した老後を迎えるための方法論について、いよいよ真剣に検討すべき時が来た。
数ヶ月前、僕には選択肢が3つあった。実現可能性を十分に吟味したうえで、もっとも安全で、しかも失敗しても路線変更が可能な方法について慎重に検討を重ねた。
ひとつめは、博士課程へと進み、将来研究職を目指すという進路だった。研究室トップのタイ語力と、タイ最高学府の学位を手みやげに出願すれば、きっとどこかの研究室に潜り込めるだろう。ところが、あわよく研究職に就けたとしても、准教授になるまでは赤貧の生活に耐えなければならないし(そもそもなれるかどうかだって分からない)、教授になるための壁があまりにも高すぎる。しかも、日本では大量の「余剰博士」(定職に就けない博士)たちの存在が深刻な社会問題になっており、特に地域研究のような潰しの利かない分野が専門では、事態を打開する術を永遠に失うことにもなりかねない(就職62.7%, 失業者30.4%, 死亡または行方不明6.9%, 「博士号取得者の就職構造に関する日米比較の試み」文部科学省科学技術政策研究所2003年)。
ふたつめは、現地採用として、バンコクに残るという進路だった。実際に中国の大学を卒業した日本人のほとんどが中国国内に残り、現地採用として働いている。しかし、生涯賃金が日本人平均の16%~33%しかないようでは、日本人としての常識的な経済力を維持できない。しかも、バンコクに3年も住んでいれば、貧困にあえいでいる一部日本人たちの生活がいかに惨めで耐え難いものかであるかを、イヤというほど思い知らされる。自分のプライドを守るために、自分のへボさを顧みずに、タイ人を頭ごなしにバカにしてばかりいるような日本人中高年のようには絶対になりたくない(こういうのに遭遇するたびに、僕は「財布と銀行通帳をもう一度しっかりと見て、自分がいかに劣っているか自覚しろ」と言いたくなる)。それに、僕には現実を無視してモウソウの世界のなかに籠もっていられるほどの強靱な精神力もないし、タイという階級社会で平均的タイ人以下の水準にまで落ちぶれるのは何が何でも避けなければならない。
ちなみに、今日までにあった現地採用としての最高オファー額は、家賃交通費込みで月給100,000バーツだった(平均的日本人現地採用の月給は40,000バーツ前後でボーナス1ヶ月)。
こうして、日本に戻って「普通」の会社員になる進路だけが残された。日本人被雇用者として「普通」程度の経済力を確保できれば、誰に恥じる必要もない。もちろん、自分のプライドを守るために、現実を無視してモウソウの世界へと逃げ込む必要もない。しかも世間一般の日本人と価値観を共有し、「普通」の日本人としての生活を送ることもできる。4年間も続けてきたすべてに満ち足りた生活を捨てて、日本での平凡な生活を余儀なくされるのは甚だ不本意だが、将来的にタイの事業会社(現地法人)に出向させてくれる企業に入社できれば、「普通」またはそれ以上の日本人として、いずれこのバンコクの地にふたたび錦の御旗を飾ることができる。
そう考えて、僕は3月下旬に一時帰国して、ほかの学生たちよりも少し出遅れたかたちで就職活動をはじめ、4月下旬に内定をゲットした。来年4月からは東京都心にある某商社で働き、できるだけ早くタイへと赴任するための試みに着手する。
これから、資本家に搾取される運命にある「サラリーマン」になるわけだが、事業会社への出向が叶えば、今日までの勉強の成果を遺憾なく発揮することができ、しかも会社から月給の半分程度の海外勤務手当と運転手付きの社用車が貸与され、5万バーツ程度のコンドミニアムに住むことができる。それで、タイという極端な階級社会のなかで、いちおうの優位を主張できるのだから良しとしておきたい。
一連のタイ留学とそれに伴う進路を決定するにあたっては、留学初期において「バンコク赴任体験記」の作者であるギィさんから数々の貴重なアドバイスをいただいた。彼のおかげで、タイ語コース修了後に大学院へ進学することを選択できた。そして、もうひとりの貴重な親友からの刺激があったからこそ、なんとかここまでやってこられた。この機会に、おふたりには心から御礼を申し上げたい。
留学終了まであとわずか9ヶ月。残り少ない貴重な時間を少しでも有意義なものにするよう、最善の努力を尽くしたい。


金融機関(社内SE職)を退職後、タイ国立ヂュラーロンゴーン大学文学部の集中タイ語講座を修了。米国語学留学を経て、同大学東南アジア研究科で修士号を取得。現在、日本国内の専門商社で海外営業に従事。
旅の指さし会話帳①タイ
タイ語読解力養成講座
タイ日大辞典
タイを知るための60章
地図がつくったタイ
タイのこころ
ギック―友達以上、でも恋人じゃない
Sexteen Thailand
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朝、埃をかぶっていたクルマを洗いに出してから、
「もし民間企業で働くのでしたら、最低でも4万バーツはいただきたいと思います。それ以下だと食事を食べるのに精一杯で、ほかに何もできなくなってしまいますわ」
「あなたが日本に帰っているあいだに、すっごく奇妙な事件が世間を騒がせたんだけど、どんな事件だったか想像つく?」
「タイ語の英語表記規則って、モングット王時代のタンマユット運動に由来するらしいよ」
「階級社会? はぁ~~? 馬鹿言ってんじゃないよ。そんなこと、どうだっていいんだ。そもそも関係ないじゃないか」
そんなバンコク在住の典型的現実退却派日本人のようにならないためにも、この日記の読者にはタイ社会の根幹をなす「階級社会」をタイ人庶民の視点から見つめ直すことができる映画をオススメしたい。コングデート・ヂャートランラッサミー監督の新作「チュム」(サハモンコンフィルム配給)が、今月12日からタイ全国の映画館で上映されている。タイ語音声だが、平易な英語字幕がついているため、コングデートが映画を通じて人々に伝えようとしていることはタイ語を話さない人にもきっと理解してもらえるはずだ。
この作品は、序盤で現在のタイを代表する風景が次々と紹介され、中盤あたりからコングデート監督お得意の「ドタバタお笑い劇」が始まり、かなり強引なハッピーエンドを迎えて幕が下りるという構成になっている。タイ社会の姿として、タクシー運転手や
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「5年前に比べるとバンコクにおける新卒者の給与水準は明らかに下がっているわ。以前は15,000バーツで雇ってくれる会社なんていくらでもあったのに、いまじゃ12,000バーツまで妥協してもいい仕事なんてちっともない」
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そんなカンジでどこが本当に流行っているのかいまひとつハッキリしないバンコクのディスコ・パブ事情だが、とりあえず RCA 