2005年7月28日(木)

「香港の歩道って歩きやすくていいよね! バンコクの歩道もこれだけ歩きやすかったらウォーキング始めちゃうかも。でもさあ、どうして道端でこんなに堂々とエロ本が売られているのかしら?」

彌敦道(ネイザン通り)の地下鉄 MTR 佐敦站(ジョーダン駅)前で、友人が香港到着以来はじめて外国観光らしい感想を口にした。たしかに彌敦道(ネイザン通り)の歩道は、バンコクの主要道路と違って、広くて段差も少ない。足元に注意を払わなくても歩ける歩道が、タイ人の目に斬新なものとして映っても決して不思議ではない。

旅行ガイドブック「地球の歩き方」によると、香港の露天では大量の無修正エロ本が売られているという。ところが、タイではエロ本の販売が禁じられているため、これが友人にとって初めてのエロ本となった。実際にタイの高級日刊紙「マティチョン」の週刊版(2005年7月1-7日版)では、大学の制服を正しく着用している16-23歳の女性の写真が掲載されているだけの雑誌 Life on Campus(ライフオンキャンパス) (39バーツ)が「ヨダレが垂れんばかりの雑誌」と紹介されている。それだけに、日本で成人誌と呼ばれている雑誌は、タイ人にとって縁遠い存在になっている。とりあえず、「日本や香港には、庶民が気軽に通えるような性風俗がないから、必然的にエロ本の需要が高まるんだろう」と説明しておいた。

昼前、高架電車 BTS モーチット駅(地下鉄ヂャトゥヂャック公園駅)近くにあるオフィスビル Sun Tower へ友人と行き、携帯電話メーカー Sony Ericsson(ソニーエリクソン) の販売総代理店 Loxley(ロックスレー) の支店で携帯電話 Sony Ericsson K750 のファームウェアを更新し、そのままバンコク・ドーンムアング(ドンムアン)空港へと向かい、アラブ首長国連邦 UAE の航空会社エミレーツ航空 KE384 便に搭乗した。

午後6時半、中華人民共和國香港特別行政區(中華人民共和国香港特別行政区)香港國際機場(香港国際空港)に到着。バンコクの旅行代理店が用意した観光バスで、地下鉄 MTR 佐敦站(ジョーダン駅)徒歩3分のところにあるホテル「大華酒店(マジェスティック)」にチェックイン。その後、部屋でくつろいでから、地下鉄と路線バスを乗り継いで山頂纜車「山頂纜車站(ピークトラム駅)」へ行き、維多利亜公園(ヴィクトリアピーク公園)から「百万ドルの夜景」で知られる香港の夜景を眺めた。帰途、カタヤキソバ(35香港ドル)を食べてホテルへと戻った。

今回、バンコクのタイ人向け旅行代理店に申し込んだのは、①航空券、②ホテル、③半日無料ツアー込みで、ひとり11,000バーツのプラン。ツアー代金を含む全旅費のうち、自分のぶんは自分で払うと友人が言っていたので、講義を1日欠席して、3泊4日の香港旅行に出かけた。

ところで、マスターカード・インターナショナル(本社ニューヨーク州パーチェス)が、アジア太平洋地域の13の市場における女性の社会進出の度合いを、①「雇用市場への参加」②「学歴」③「管理職の割合」④「平均収入」の4つの指標で数値化した「女性の社会進出度調査」によると、1位がタイ(男性を100とした場合92.3)、2位がマレーシア(同86.2)だった。この調査から、タイ人の女性には、男性とほぼ同等の社会的経済的な能力があることが分かる(ちなみに日本人女性は54.5)。

一部の日本人のあいだでタイ人の恋人への仕送りがしばしば話題に上っているが、中流のタイ人女性の経済力を侮ってはいけない。実際に、バンコク在住の独身日本人現地採用世帯(平均40,000バーツ×1)と、既婚タイ人中流世帯(平均24,000バーツ×2)の月間所得を比較すると、ほとんど差がないことが分かる。

タイ人の彼女に仕送りをしていると公言することは、普通のタイ人女性であれば仕送りに頼らなくても十分生活していけるため、相手に就労能力がないのを認めているのに等しい。実際に「仕送り」の背景を詳しく調査してみると、お気に入りの娼婦(売春婦)に売春をやめさせるための所得保障として支払われており、これはタイに関する習熟度の低い日本人によくあるケース。

標準的なバンコクの若者たちは、両親に仕送りをすることはあっても、他人に仕送りを要求するはずがないし、仮に仕送りの提案をしても拒否するはずだ。なにしろ、彼/彼女たちには、海外旅行を楽しめるだけの経済的な余裕があるのだから。

2005年7月29日(金)

「バンコクで売ってる宝石の方が全然イケてるのに、なんでこんなのにカネを出さなきゃいけないの? だれも買わないんじゃないかしら。安物パッケージツアー参加料の一部っていうのは分かってるけど、もう付き合いきれないわ」

香港市内にある出口のない宝飾品工場アウトレット。どこを見渡しても出口が見つからない「軟禁システム」からの脱出を図るために、友人は店内の扉(従業員専用と書かれている扉を含む)を片っ端から開けて回った。

朝、タイ人向けの無料市内観光ツアーに参加し、微妙すぎるタイ語を話す香港人ガイドの案内で、維多利亜公園(ビクトリアピーク公園)中腹から市内を眺め、整備の行き届いている淺水灣( レパルスベイ)のビーチリゾートを散歩した。その後、市内へと引き返した。

およそ9年ぶりにパッケージツアーに参加したため、土産物軟禁という恒例行事の存在をすっかり失念していた。タイ人ツアー客(日本人1名を含む)を乗せた観光バスは、16階建ての雑居ビルに停車。香港人ガイドについていくと、1-3階部分に入居しているタイ人観光客向けの宝飾品アウトレットへと案内された。店内には英語、中国語、タイ語の表示がある(日本語はない)。日本人向けの土産物屋と比較すると中心価格帯が若干低い印象だが、市中の相場より割高という点では似たようなものだった。

一時間が経過し、忍耐力が限界に達したところで、そろそろ出ようと友人を促した。ところが、店内のどこを探しても出口の表示が見つからない。やっとのことで見つけた出口の先には、ラグジュアリーな店内の雰囲気からは想像できないような、古ぼけたエレベーターホールがあった。

宝飾品店で受けた精神的苦痛にのせいで、ホテル「大華酒店(マジェスティック)」に戻ってから、午後6時まで昼寝してしまった。その後、銅鑼灣站(コーズウェイベイ駅)周辺の百貨店街と、旺角站(ウォンコック駅)周辺の香港ブランドのブティック街を見て回った。

2005年7月30日(土)

「子供の頃から香港映画が好きだったから、香港のことはけっこう詳しく知っているつもりだったけど、やっぱり実物と映画は別物ね。香港人女性がこれほど可愛くないとは夢にも思わなかった。世間一般で言われている香港人が、みんな芸能人のように可愛いとは限らないっていうのは分かるけど、中国系タイ人が純血よりも混血の方が可愛いのと同じように、ゲルマン民族とか他の民族と交配しないと中国人は可愛くなれないのかしら?」

地下鉄 MTR 旺角站(ウォンコック駅)周辺に広がる庶民向けの繁華街を歩いていたところ、友人は香港人女性に対する感想について話し始めた。

タイにおける極端な階級社会では、直射日光を浴びるような仕事をしている人はヘボいとみなされる。そのため、肌の白い中国移民は、よほど不細工でない限り優位に立つことができる。ところが、どうやら漢民族であれば誰でも無条件に可愛いというわけでもないらしい。友人によると、若者が多いこの繁華街でも、可愛いと思えた女性は3時間で2人しかいなかったという。

昼すぎ、地下鉄 MTR 中環站(セントラル駅)から小型バス6番で遊園地「海洋公園」へと向かった、午後6時、ホテル「大華酒店(マジェスティック)」に戻り、シャワーを浴びてから、地下鉄 MTR 中環站(セントラル駅)周辺の繁華街へセール品漁りに出かけた。

この時期、香港ブランドのブティックでは、夏物のバーゲンセールを実施しており、3-7割引の店も珍しくない。それを見越した常夏の国タイから、ブランド品を買い集めるために、人々が殺到するという。都市部の繁華街では、店舗内や交差点などでタイ語が飛び交っていた。

午前5時半ころ、ホテル1階のディスコから聞こえてくる騒音で目を覚ました。

2005年7月31日(日)

「バンコクの方が可愛い服がたくさんあるし値段だって安いから、わざわざ香港までショッピングに来る必要なんかないわ」

海外旅行の醍醐味は、日常とは異なる空間で、社会的なしがらみを忘れて思いっきり羽を伸ばすことにある。学者たちはこれを非日常と呼んでいるが、日本人とタイ人では海外旅行に求めているものがまるで違う。

僕たち日本人がバンコクの開放的な雰囲気に居心地の良さを感じるように、タイ人は自分たちの「あいまいな社会」をそれなりに気に入っている。 L.A.(ロサンゼルス) 留学時代の友人によると、タイ人は母国でストレスを十分発散できるから、逆に外国に行ってもストレスを蓄積させるだけで、あまりいいことがないという。

日本人にとっての香港の魅力は、物価が安く混沌としているため、非日常という空間で開放感を満喫できることにある。ところがタイ人にとっては、物価が高く整然としているため、妙に現実的で逆に窮屈に感じるという。

タイという極端な階級社会で生きる人々にとっての海外旅行とは、非日常を楽しむことではなく、むしろ階級社会という現実のなかで自分が中流であることを証明するための行為、という意味合いが強い。

タイ人は、自らのルーツを漢民族に求めており、中国人と中国の文化に一種の憧れを持っている。そのため、香港、シンガポール、雲南省などへのパッケージツアーが人気を集めている。ところが、香港特別行政区やシンガポールのような都市国家に漢民族のルーツを見出すのは難しい。時として、それがタイ人観光客を落胆させる原因にもなっている。

今回の香港旅行では、3日連続で雨が降り続け、しかも英語が日本並みに通用しなかっため、いろいろと苦労が絶えなかった。朝、ホテルをチェックアウトして、ショッピングに出かけた。が、ついに都市観光に対する意欲を完全に失い、昼すぎにホテル「大華酒店(マジェスティック)」へと戻ってきてから、旅行代理店が手配した香港國際機場(香港国際空港)行きのバスが迎えに来る午後6時まで、だらだらとロビーで時間をつぶし続けた。翌8日午前1時過ぎ、バンコク・ドーンムアング空港(ドンムアン空港)に到着した。初日にバンコク・ドーンムアング・ドーンムアング空港(ドンムアン空港)国際空港で両替した香港ドルは全て使い切った。ツアー代金11,000バーツ(1人分)のほか、現地で食費、交通費、遊園地入場料など合計7,004バーツの出費があった。