国境ゲートの閉門時間後にタイからカンボジアへの不法越境を検討した

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「えっ!? すぐに行くから待っていてよね! どこへも行かないで、ちゃんと部屋にいるのよ!!」

午後12時半、タイとカンボジアの国境があるカジノ街、ポーイペートへ一緒に行く約束を数ヶ月前からしていた友人に二度目の電話をかけてみたところ、気怠そうに「きょうは二日酔いだからパスしたい」と言ってきた。しかし今日を逃すと、今回の旅行でカジノを楽しむ機会を確実に逸することになる。そこで、「じゃあ、ひとりで行ってくる。たぶん君と会うことはもうないと思うから、部屋にある荷物は全部まとめてレセプションに預けておく」と応じると、友人は声色を変えて突然一緒に出かけると言い出した。

カジノ旅行の予定は、すでに2回も延期させられており、しかも、この友人には今回の旅行でそれ以外のことでもいろいろとウンザリさせられ続けていたため、「もう来んな!」と言って電話を切ることも考えていた。しかし、たかだか二日酔いで罪人を裁くかような暴挙に出るのも大人げない。そう思って考え直したが、結局この大甘な判断のせいで、終日たたられる羽目になった。

午後1時半、ピパット2街路にあるサービスアパートメント Silom Convent Garden に友人が到着した(ここでも追い返そうと試みたが失敗している)。ウォングサワーング通りにあるショッピングセンター Big-C へ行ってバーベキュー料理を食べてから、友人の実家へクルマを置きに行った。

「つぎの午後4時発が本日のアランヤプラテート行きの最終バスとなります。所要時間は約4時間を予定しています。カジノへ行くのでしたら、アランヤプラテートで一泊していくといいでしょう」

午後3時10分、モーチットマイにある長距離バスターミナルの乗車券売場で、オンカラック経由アランヤプラテート行きのチケット(ひとり236バーツ)を2枚買った。係員によると、バスがサゲーオ県アランヤプラテート郡に到着するのは、そこからさらに7キロ東にあるタイ・カンボジア国境が閉門するのと同じ午後8時ちょうどだという。その前の午後2時半発のバスに乗っていれば間に合っていたはず。ますます激しくなっていく僕の形相にいよいよ危機感を募らせた友人は、カジノ好きの友人たちに電話をかけまくって、何とか今日中に国境を通過する方法はないかと模索しはじめた。

「カジノバスがバンコクを出るのは早朝だから、これはムリね。あとはタクシーだけなんだけど・・・・・・これも6,000バーツはかかるかしら?」

ここでキレても仕方ない。それに、立て替え払いで日本から買ってきてあげたデジタルカメラの購入代金5,000バーツがいまだ未回収のままになっている。ここは怒りをグッと抑えて、無言でバスに乗り込むしかない。

午後4時、モーチットマイにあるバスターミナルから長距離バスの1等乙車に乗って出発した。終始無言のまま、バスの車内にあるモニターに映っていた映画 Julasic Park の1と2を見て、午後8時20分に終点のアランヤプラテートに到着した。国境はすでに閉鎖されている。やむなくタイ深南部のマレーシア国境で働いていた別の友人に電話をかけて、袖の下を渡して越境する方法がないかと尋ねてみたが、「こればかりは国境まで行って実際に聞いてみないことにはなんとも言えない」と言われ、やむなくバスターミナルから3輪タクシーのトゥクトゥク(往復150バーツ)に乗って国境へ向かった。

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「ひとりにつき片道1,500バーツの賄賂を支払って、越境の手引きをしてもらうことになる。タイの出国スタンプはなしだ。もちろん、出国スタンプがなければタイに再入国することはできないから、復路でも誰かに袖の下を渡して手引きをしてもらう必要がある。ふたりで往復するとなれば6,000バーツは堅いだろうな。それに、タイの警察は甘いから何とでもなるが、カンボジアの警察は外国人から少しでも多くのカネをむしり取ろうと虎視眈々と機会を窺っているから、もし不正に入国したことがバレて逮捕でもされたら、それこそトンデモナイ金額の賄賂を要求されることになるぞ。つい最近も、西洋系の外国人が不正に越境してカンボジアの警察に逮捕されていたが、そのときもかなりの出費を強いられたようだ」

午後8時45分、国境のタイ側にあるローングルア市場の駐車場で、不法越境の方法について守衛に話を聞いてみたところ、かなり無謀だと分かった。それに、国境の橋の下を流れている小川を密かに横断する深夜越境を復路も実行すると、今度は日本へ帰国する便に間に合わなくなる。

「この国境ゲートは、陸軍の国境警備隊司令部と財務省のアランヤプラテート税関、双方による立ち会いのもとで毎朝7時に開門される。小官が独断で開門させようにも、国境警備隊が持っている鍵だけではどうにもならないんだ。気の毒だが、アランヤプラテートの中心部にあるホテルに一泊して、またあした出直してくんだな」

午後8時55分、国境ゲートの約100メートル手前で、自動小銃を肩にかけている国境警備兵に同様の質問をしてみたところ、華麗にスルーされた。

「すでに閉門されている薄暗い国境ゲートの前でポツンと立ちつくすというのも、なかなかレアよね? こんな貴重な体験は、そうそうできるもんじゃないわよ」

―― ・・・・・・。

午後9時20分、アランヤプラテートの中心部にあるホテル「アランマーメード」(朝食付き900バーツ)にチェックインして、無言のままテレビを見続けた。この友人とはもう何も話をする気が起こらず、タバコを吸うのたびにホテルの外へ出て、別の友人たちと長電話をしていた。

こんなことになるのなら、はじめから部屋に籠もって、長電話をしていたほうがよほど良かった!! このほかにも、すでに手配が済んでいた第2案のとおりに別の友人と出発するか、第3案として用意していたスコータイ遠征に変更するという方法もあった。それもこれも全部、優柔不断な判断をした自分自身のせいだ。

ABOUTこの記事をかいた人

2001年に金融機関の社内SEを辞めてタイへ渡り、タイ国立ヂュラーロンゴーン大学文学部が開講している外国人のための集中タイ語講座、インテンシブタイ・プログラムを修了しました。その後、アメリカ・ロサンゼルスにおける語学留学を経て、2006年にヂュラーロンゴーン大学大学院の東南アジア研究科修士課程を修了。以来、機械部品商社の海外営業、生産設備商社の海外営業を経験し、現在は機械メーカーの国内営業部門で海外現法向けの部品輸出を担当しています。