バンコク留学最終日 (本帰国当日)

「あ・・・・・・、うん。実家に着いたら電話ちょうだいよね」

午前6時35分、ユナイテッド航空 UA852 便の出発予定時刻まであと15分に迫っていた。バンコク・ドーンムアング国際空港にある出国審査場の入口で、友人と短い別れの挨拶を交わし、苛立ちを募らせていたユナイテッド航空の地上係員たちに急かされて出国審査場へ向かった。思っていたよりあっけない幕切れだったが、それでも感傷的な別れをするのに比べたら、まだマシだったのかもしれない。

こんな慌ただしいことになったのには、それなりの理由があった。

20060320-2@2x午前4時にヂャーオプラヤー川の西岸にあるホテル Millennium Hilton の客室で目を覚まし、大急ぎで身支度を整えてから、友人のクルマのトランクに手荷物を詰め込んで、午前5時10分に出発した。ヂャーオプラヤー川に架かっているタークスィン橋を渡り、スラウォング入口から高速道路のスィーラット・ナイムアング自動車道に乗って、バンコク北部にあるドーンムアング国際空港へ向かった。

空港に到着したのは、ユナイテッド航空の UA852 便が出発する1時間前の午前5時50分だった。まだ時間的な余裕は十分にあった。第2ターミナルビルの3階にある出国ロビーの前で、クルマから降りて駐車場までの運転を友人に代わってもらい、引越の荷物で満載になっているカートを押しながら、ユナイテッド航空のチェックインカウンターまで歩いて行った。

チェックインカウンターで乗客の搭乗券を発行し、受託手荷物の受付をしていた女性の係員は、僕の荷物の量を見るなり唖然として急に投げやりな態度になった。飛行機の機内に預ける手荷物といえば、旅行カバンのようなものを想像するかもしれないが、僕が押してきたカートに乗っていたのは、それこそ家財道具一式以外の何物でもなかった。昨年の12月14日にそれまで貯めてきた80,000マイルを利用してファーストクラスの特典旅行券を手に入れて、今回はその復路便で帰国するため、エコノミークラスの2倍にあたる40キロまでの手荷物を預けられることになっていたが、実際に計測してみたところ、なんと82キロもあった。

きのう、それまで住んでいたスクンウィット13街路にあるスクンウィットスイートの部屋を引き払うときに、それなりに大切なものを含む比較的使用頻度が低い物を選んで片っ端からごみ袋に突っ込み、エレベーターホールのすぐ横にあるゴミの集積部屋へ運び込んで、日本へ持って帰る荷物の量を最小限に抑えたつもりだが、高校時代の友人に依頼して日本まで運んでもらっている書籍類の32キロを含め、合計で100キロ以内に収めることはできなかった。それもこれも、足かけ4年半にも渡ってバンコクで生活してきたのだから仕方ない。

機内に預ける手荷物の重量が航空券に記載されている重量を超えると、自分が搭乗するクラスに関わりなく、超過した重量1キロにつきファーストクラスの正規運賃の1%が課金されることになっている。今回搭乗するユナイテッド航空のバンコク・成田線では、1キロにつき545バーツの計算になる。これをまともに支払っていたら22,890バーツもかかってしまうため、チェックインカウンターの係員に掛け合ってみたところ、そのうちの17キロ分については目をつむってもらえることになった。最終的に25キロの超過ということになり、追加料金として13,625バーツを支払った。このやりとりに約10分間を費やした。

さらに、留学ビザの再入国許可証をもらうために、隣の第1ターミナルビルにある入国管理局のドーンムアング出張所へ行って必要な手続きを済ませ、ふたたび第2ターミナルビルへ戻ってくるまでのあいだに20分以上の時間を費やし、その結果、友人と別れの挨拶をするための時間を十分に取れなくなってしまった。

友人と別れてから出国審査場へ行くと、さらに慌ただしくなった。航空会社の地上係員に促されるまま正規の出国審査場を突破し、その奥にあった特設のブースへ行って係官にパスポートを手渡した。数年前にタイの入出国審査で導入されたばかりのウェブカメラで顔写真を撮影された。そして、係官がパスポートを確認しているあいだに、先導する航空会社の男性係員のあとについて、機内へ持ち込む旅行カバンを抱えながら、出国審査場からもっとも離れたところにある36番ゲートを目指して全速力で走った。

途中、後方から猛ダッシュでやって来た別の男性係員から、リレーや駅伝の要領でパスポートを受け取り(係員はその場に倒れ込んだ)、出発5分前の午前6時45分にはなんとかユナイテッド航空 UA852 便のファーストクラス 4A 席に身体を沈めることができた。原因については不明だが、ユナイテッド航空 UA852 便は定刻より10分遅い午前7時ちょうどに出発した。

20060320-3@2x

ウエルカムドリンクとして出されたシャンパンを飲んでのどを潤し、すぐ横にあった小さな窓から早朝のバンコクの景色を眺めながら、この街に別れを告げた。僕のバンコク留学は今日で最後になるが、ここバンコクで昔から数えきれないほど繰り返されてきた日本人による善悪美醜・悲喜交々の愛憎劇は、僕の不在とは関わりなく、さまざまな人々の夢や希望とともに、今後も繰り返されていくことになるのだろう。

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  •  ケイイチさん、はじめまして。現在、北京に留学中のmingziと申します。

     タイ人の友人がいる関係で、タイ関係のサイトを色々と見ているうち、こちらにお邪魔する運びとなりました。

     タイに行ったことはありませんが、ケイイチさんの生き生きとした日記に、思わず引き込まれてしまい、気付いたら日記を全部読んでしまっていました。

     今は日本でお仕事をされているのですね。私も、中国に来る前は会社員をしていました。学生に戻って半年。時々会社員時代が懐かしく思えます。

     私も、ケイイチさんのように、充実した留学生活を送れるよう、日々精進して参りたいと思っています。 

  •  ケイイチさん、はじめまして。現在、北京に留学中のmingziと申します。

     タイ人の友人がいる関係で、タイ関係のサイトを色々と見ているうち、こちらにお邪魔する運びとなりました。

     タイに行ったことはありませんが、ケイイチさんの生き生きとした日記に、思わず引き込まれてしまい、気付いたら日記を全部読んでしまっていました。

     今は日本でお仕事をされているのですね。私も、中国に来る前は会社員をしていました。学生に戻って半年。時々会社員時代が懐かしく思えます。

     私も、ケイイチさんのように、充実した留学生活を送れるよう、日々精進して参りたいと思っています。 

  • > mingzi さん

    はじめまして。バンコク留学生日記をごらんくだり、ありがとうございました。先月末、久々に大学へ行ったのですが、学生時代がとても懐かしく思えました。

    mingzi さんも充実した留学生活を送ってくださいね!

    P.S. リンクありがとうございました。後日、こちらからもリンクを張らせていただこうと思います。

  • > mingzi さん

    はじめまして。バンコク留学生日記をごらんくだり、ありがとうございました。先月末、久々に大学へ行ったのですが、学生時代がとても懐かしく思えました。

    mingzi さんも充実した留学生活を送ってくださいね!

    P.S. リンクありがとうございました。後日、こちらからもリンクを張らせていただこうと思います。

  • ヨウイチ

    ケイイチさん、この日記がもうすぐ終わってしまうのとてもさびしく感じています。
    日本での生活はいかがですか。ケイイチさんからみた久しぶりの日本の社会はどううつってるんでしょうか。ケイイチさんの日本論も聞いてみたいです!

  • ヨウイチ

    ケイイチさん、この日記がもうすぐ終わってしまうのとてもさびしく感じています。
    日本での生活はいかがですか。ケイイチさんからみた久しぶりの日本の社会はどううつってるんでしょうか。ケイイチさんの日本論も聞いてみたいです!

  • > ヨウイチさん

    こんにちは。バンコク留学生日記も残りわずかになってしまいました。

    僕の目から見た日本社会ですか? うーむ。近年、「格差社会」という言葉をよく聞きますが、なんだか日本で「タイ人大卒者の職務経験3年程度」の標準的な所得しか得ていない労働者層が激増中らしいですね。

    タイ人と同程度の所得しか得ていないのであれば、農民から過酷な搾取をしているタイ都市部の住民の方が、よほど豊かだと思います。日本人は思っていたよりもずっと貧しかった、というのが正直な感想です。

    久々に日本へと帰ってきて驚きました。僕たちの日本、これからどうなってしまうんでしょうね?

  • > ヨウイチさん

    こんにちは。バンコク留学生日記も残りわずかになってしまいました。

    僕の目から見た日本社会ですか? うーむ。近年、「格差社会」という言葉をよく聞きますが、なんだか日本で「タイ人大卒者の職務経験3年程度」の標準的な所得しか得ていない労働者層が激増中らしいですね。

    タイ人と同程度の所得しか得ていないのであれば、農民から過酷な搾取をしているタイ都市部の住民の方が、よほど豊かだと思います。日本人は思っていたよりもずっと貧しかった、というのが正直な感想です。

    久々に日本へと帰ってきて驚きました。僕たちの日本、これからどうなってしまうんでしょうね?

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。