タイの中古車屋にマイカーを売却する その2

「買い取ったクルマは自分で乗るつもりでいますので、あまり吹っ掛けないでください。転売の目的ではないんです。これより良い話なんて、ほかにはないでしょうから、わたしの店まで来ていただけませんか?」

正午前、スクンウィット13街路にある住まい Sukhumvit Suite 17階の自室で、友人はバンコクの各地にある中古車屋から引っ切りなしにかかってくる値段交渉の電話対応に追われていた。

タイの中古車屋にマイカーを売却する その1

2006.03.15

売却当日のきょうになって、僕の愛車だった BMW 318i の買取価格は緩やかではあったが、それでも着実に高騰していった。けさイチバンの電話は、プララームソーング通りにある中古車屋からのものだった。

「先日、『最高で30万バーツ。それ以下にはなっても、それ以上では買い取らない』 と申し上げましが、きょう、あなたのクルマを30万バーツで買い取ることに決めました。即金でお支払いできますが、ご来店は何時頃になりますでしょうか?」

つぎに、ガセートナワミン通りにある中古車屋から電話があった。先日、プララームソーング通りで「25万バーツだ。それ以上は絶対に出せない」と応じてきた中古車屋が、断りを入れず勝手に別の中古車屋に紹介したのではないかと友人は推測している。中古車業界のネットワークもなかなか侮れない。

「ほかの中古車屋はいくらで買うと言っていますか? いまの最高値が30万バーツであれば、わたしたちは31万バーツ出しましょう。あなたのクルマの状態はとても良いと伺っています。ほかへの売却を決める前に、一度見せに来ていただけませんか?」

この時点で、クルマの価値は31万バーツになった。

―― すでに、ほかの中古車屋から私のクルマを31万バーツで買いたいという申し出がありまして、もし同じ値段ということでしたら、わたしは先にお約束をしたその中古車屋にクルマを売らければなりません。それが日本流の信義というものです。日本人として、このやり方だけは絶対に曲げられません。しかし、もし32万バーツで買い取るというのでしたら、ほかの話はすべて忘れて、いますぐにでもあなたの店へ行きましょう。

日本に「先着順で売約の優先順位が決まる」という習慣がホントウにあるのかどうかについてはともかく、「交渉ゲーム」のような軽い気持ちでそのように応じた。たかだか数万バーツの価格差のために、押し問答のような商談を朝から続けていたため、いい加減にウンザリとしており、もうどうでもいいといった心境だった。一方、自分流の値段交渉の手段を封じられた相手は戸惑い、「少し考えさせて欲しい」と言って交渉を一時保留し、継続を申し出ててきた。なかなか良い判断だ。「午後1時にはクルマを売りに出かけますので、それまでにお返事をいただければ結構です」と言って、電話機の終話ボタンを押した。

その5分後、ふたたび同じ中古車屋から電話がかかってきた。

「私はスィーナカリン通りのスィーコンスクエアの近くにある中古車屋の○○にいます。あなたの言い値どおり、32万バーツで買い取ります。ナーナーからですと、南プルーンヂット入口から高速道路に乗って、パッタナーガーン2の出口で降りていただくのがもっとも早いと思います。途中で道に迷ったら電話をください」

こうして、スクンウィット通りの南プルーンヂット入口からチャルームマハーナコーン自動車道に乗り、そのままスィーラットナイムアング自動車道、スィーラットノークムアング自動車道を経由して、バンコク南東部のプラウェート区にある中古車屋までやってきた。

「やっぱり、31万5千バーツじゃダメですか?」

―― ダメです。約束を反故にするなら、先約がある中古車屋へ行きますよ?

こうして無事に言い値で売れることになり、中古車屋が用意した売買契約書と青い表紙の自動車登録証にある「権利放棄欄」にサインをして、現金32万バーツを受け取った。クルマの売却は想像していたより簡単だった。

自動車非所有者となった奇妙な喪失感にとらわれながら、タクシーに乗って友人とスクンウィット通りまで戻ってきた。そこで職場へ向かう友人を見送り、スクンウィット7/1街路にある非銀行系の両替屋 VASU へ駆け込み、いまさっき受け取ったばかりのクルマの売却代金の32万バーツと留学資金の余り(約3万バーツ)を両替して、100万円余りの日本円を受け取った。

日没後、バンコク在住の日本人たちの飲み会に参加するために、エーガマイ通りにあるタイ料理店 Khun Ying と、スクンウィット22街路にある飲み屋「あさみ」へ出かけた。

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    はじめまして。中古車奮闘記、おもしろく読ませて頂きました。私はパトンタニ県に住んでいます。中古車を購入したいのですが、良心的な店があるかどうか、探してます。ディーラーが一番安心なのですが、ご承知のように高値なので躊躇してます。いま新車に対する優遇税の問題もあって中古車価格は難しい選択時期のようです。
    なにかよい情報がございましたらお教えください。よろしくお願い申し上げます。

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。