バンコクのゴーゴーボーイズへ世間一般のタイ人女性と行ってみた

「想像していたほど怖くはなかったけれど、疲れが今になってどっと出てきた。これが自粛バージョンではなかったら、わたし、耐えられなかったかもしれない」

午後11時40分、外国人観光客向けのゴーゴーボーイズが密集している、スラウォング通りにあるドゥワンタウィープラザは、同性愛者向けの性風俗店で働いている呼び込みの人たちで溢れかえっていた。The Boys という店へ一緒に入って出てきたばかりの友人のタイ人女性は、ショーのなかでは暴力的なシーンが続く、サディストと呼ばれるパートがいちばん堪えたと話していた。

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2006.02.20

The Boys のショーは、 午後10時半と午前零時の1日2回公演されており、ダンス → 観客参加型ショー → ゲイ → ダンスの4つのパートから構成されている。

一連のショーは古典舞踊で幕が上がる。演じている役者たちは、大学のダンスサークルと同程度の訓練を受けており、踊りもそれなりに見応えがあった。

このときに演じられるインド様式の古典舞踊は、外国人の観光客たちにはラーマギアン物語に代表されるタイ王室の庇護を受けているタイ固有の伝統舞踊のように映るかもしれないが、友人は、もしそんなものをゴーゴーボーイズのような性風俗施設で演じてしまったら、タイの伝統文化を貶めたとして市民団体からさんざん糾弾されたあげく、各方面からのさまざまな圧力にさらされて、最終的に廃業を余儀なくされる、と話していた。

蛍光カラーの絵の具で身体中に何かの模様が描かれている上半身裸姿の男たちがステージへあがり、バラード調の音楽とともにゆっくりとしたダンスがはじまると、観客たちは次第に幻想的な非日常の世界へといざなわれる。

そのつぎにステージに現れた陽気で愛嬌のある大男は、先端の部分に火をつけた棒を振り回しながら、自分の身体に燃料用のアルコールを塗ってそこに火をつけたり、口から火を吐いたりといった芸を見せてくれた。

自分の股間の部分を覆っているハードゲイ風の衣装の上に火をつけて、その火を使って最前列に座っている観客にタバコをつけさせようとするあたりから、このショーの性風俗施設らしい一面があらわれてくる。

このとき指名された最前列に座っている男性客は、タバコの火をつけるために、自分の顔を男の股間からわずか数センチのところまで接近させられる。演出上の都合で点火を故意に失敗させられると、肌が露出しているケツにつけた火でタバコをつけるように要求される。そんな臭そうなことに付き合わされては堪らないので、僕は役者と目を合わせないよう視線を宙に泳がせ続けた。

このような観客参加型のショーを眺めているうちに、同性愛者たちが共有している世界観に対する嫌悪感や抵抗感といったものが次第に失われていく。

ハードゲイ風の男が退場すると、ステージには常軌を逸しているほど不細工なオカマ婦人が登場した。その周りを囲んでいる幼稚園児のようなお馬鹿な衣装を着ている男たちが、不細工なオカマ婦人に対して無邪気なセクハラを繰り返している様子を眺めているうちに、次第に常識といった概念が破壊されていく。このとき、友人は、まだあまり怖くない、と話していた。肝試しにでも来ているつもりなのだろうか。

この店の本来の客であるゲイの皆さんにとっては、ここからが最大の見どころだ。不細工なオカマ婦人とその仲間たちがステージから去ると、それまで店内に流れていたホノボノとしていた音楽が、突如、戦闘シーンのような激しい音楽に変わり、客席の後ろのほうから大きな叫び声があがった。

これがサディストと呼ばれるパートで、スーツ姿の会社員風の男が、鞭を振り回しているハードゲイの男ふたりに引きずられながらステージへ上がってくる。あらかじめ仕掛けが施されている会社員のジャケットとワイシャツが乱暴に引きちぎられ、その下に身に付けているハードゲイ系の衣装が露出すると、店内はみんなゲイといった不思議な雰囲気に包まれる。そこからは、もう、互いに責めては入れる(真似)の繰り返しだ。友人は自分から3メートルも離れていないところで延々と繰り広げられている暴力シーンを目の当たりにしてひどく怖がっている様子だったが、こんなところでホラー映画を見に来た女の子よろしく腕をグッとつかまれてしまっては、この店の本来の客であるゲイの男たちを困らせてしまうではないか。

その後、ふたりの男がシャワーを浴びながら絡み合うシーンが続き、インド様式の古典舞踊でクールダウンしたのちに、ショーの幕は降りた。

昨年12月17日の晩に友人の日本人たちとゴーゴーボーイズへ行った話を友人のタイ人女性して以来、連れて行ってほしいとずっと言われ続けてきた。さすがに男女ふたりで「ゲイの楽園」へ足を踏み入れるのも躊躇われたためこれまで保留してきたが、これから日本人の男女5人組がゴーゴーボーイズへ繰り出すという知らせを受けて、友人のタイ人女性に声をかけて連れて行った。

「もし、下半身が丸出しの本番を見せつけられていたら、精神的にかなり堪えていたと思う。あの晩、あなたがグッタリとしていた理由が分かったような気がする」

タイにおける政情不安の煽りを受けて、年明け以降、警察による取締りが強化され、現在、下半身丸出しの本番ショーは自粛されている。つぎはゴーゴーバーへ連れて行ってほしいと言われたが、さすがに売春婦を斡旋している施設へ世間一般の女性を連れて行くのもなんだろうと思って断った。

世間一般のバンコク人女性は、自分たちが住んでいる街の闇の部分について、あまりにも無知で無頓着だ。仕事で必要な書類を受け取るために、スクンウィット19街路にある Westin Grande Sukhumvit の前で午後11時半に客と待ち合わせをしてしまうようなこの友人にとって、今回の体験は非常に新鮮で興味深いものとなったに違いない。

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2005.08.27

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。