中国系タイ人なんて大嫌い

20060128@2x

「中国人(中国系のタイ人)って、どうしても好きになれないのよね。さっきの店でもそうだったけど、ところ構わず口から食べ物を吐き出すし、いきなり鼻に手を当てては鼻糞を飛ばすし。さっきの中国料理のお店だって、パッと見だけなら清潔そうに見えたかもしれないけど、実際に厨房のなかを覗いてみたら超不潔だったなんてことも珍しくないわよ。それに、あの、中国人がイチバンっていう中華思想、なんとかならないのかしら? わたしが通っていた中等教育学校(日本の中学・高校に相当)はチャイナタウンのど真ん中にあって、全校生徒の9割方が中国人だったから、肌の色が少しでも浅黒いとすごく目立っちゃって、肌が黒いコは中国語で『犬族』とか呼ばれてバカにされていたもの。わたしは中国人より肌の色が白かったからなんとか学校生活を無事に送ることができたけど、それでも、あんなのと一緒にされてしまったら、まったくたまったもんじゃないわ。ある日、中国人の生徒の保護者が学校に来たんだけど、職員室の場所を中国語で聞かれたときには本当にムッときたもの。そもそも、タイにいる中国人は裸一貫でやって来たような日雇い労働者すぎなかったのよ。それが今では、まるでタイのご主人様になったかのような顔をしてふんぞり返っている。だいたい、『肌が白い=中国人っぽい=イケてる』なんていったい何処の誰が決めたのよ!? バカバカしいにも程があるわ」

午後9時、チャイナタウンの愛称で親しまれているバンコクの中華街「ヤオワラート通り」で渋滞にハマっていたところ、友人はプラモングットグラーオ王(1880-1939, ラーマ6世)の英語論文にある「東洋のユダヤ人」さながらの華人批判を始めた。中国系のタイ人が何かと持て囃されがちなこのタイで、中国系以外のタイ人はさまざまなジレンマを感じながら生活をしているようだ。

タイは多民族国家で、▽イーサーン人、▽低地ラオス人、▽ラーオ族、▽タイ族、▽マレー系、▽クメール族、▽ベトナム人、▽モン族など、30以上にものぼるエスニックグループが入り混じっている。戦後のタイ政府が防共政策の一環として実施した汎タイ民族主義と属地主義によって、タイの国籍を持っているすべての国民を「タイ民族」と定義して、タイ国内に住んでいるほとんどの民族(イスラーム系とインド系を除く)の同化に成功ている。しかし、中国系タイ人は、いまもなお華人としてのアイデンティティーを頑なに守り続けている。

中国からの移民は、タイ語で中国人(コンヂーン)あるいは中国系タイ人(コンタイチュアサーイヂーン)と呼ばれている。タイ全国に685万人程度いるとされ、タイの人口のおよそ10%を占めている。

中国系のタイ人は、タイ人のあいだではひとくくりにされているが、よくよく調べてみると想像しているような中国人像とはまるで違うことが分かる。出身地別に分類すると、▽潮州人(テーヂウ, 中国南東部の沿岸地域出身者)が56%、▽客家(デ, 中国南部の山岳地域出身者)が16%、▽海南系(ハイラム, 中国島嶼部の出身者)が11%、▽福建系(ホックギアンまたはフーヂアン)が7%という構成になっている。タイに移住してきた中国人たちは、いわば中国語の方言を操っている田舎者たちであって、北京や上海などに代表される文化的な地域出身の中国人ではない。

中国人がタイに住み始めたのは、アユッタヤー時代(1351-1767)に王室が独占していた泰中貿易と、それにともなって移住してきた福建系の商人たちがはじまりといわれている。潮州系中国人の子であるタークスィン王(1734-1782)がトンブリー朝(1767-1782)を興して、タイの南部からラオスまでの領域を影響下におくと、こんどは潮州系の移民が増加した。その後、鄭という中国語の姓を名乗っていたプラプッタヨートファーヂュラーローク大王(1737-1809, ラーマ1世)が王位を簒奪して、いまのラッタナゴースィン朝を興すと、イギリスとのあいだにボウリング条約(1855)を締結し、それまで王室が独占していたタイの貿易は自由貿易へ移行した。タイへ流入する中国人の移民労働者たちは、交易の活性化ともに増加を続け、20世紀の初頭になって中国(清国)で海禁令(いわゆる貿易制限)が解かれると急増し、1920年にピークを迎えた。その後も、中国における国共内戦(1949)に破れてミャンマーからも追われた国民党系の難民(1950)、文化大革命(1966-1976)で亡命を余儀なくされた難民、ミャンマーにおける政情不安にともなう難民といった流れで中国人の流入は続いている。

華人のタイ移住に関しては、そもそも日記で扱えるボリュームではなく、すでに研究もかなり進んでいて文献も豊富にあるため、詳細についてはそちらに譲りたい。

中国の旧正月にあたる春節の前日(大晦日)のきょう、タイの中華街「ヤオワラート通り」に集住している中国系のタイ人たちは、あさに「送神」という儀式を行って道教の神々に5種類の動物(豚、ニワトリ、アヒルなど)を供え、昼前に「パイペーボー」という儀式で甘い食べ物を供えて先祖の霊を供養する。昼すぎになると「除夕」という儀式を行い、災いを追い払って福を呼び込む(豚、ニワトリ、アヒル、などの値段が高騰し、一部の食堂では閉店を余儀なくされる)。こうして、あすの春節(トゥルットヂーンまたはワンティアオ)を迎えることになる。

この春節について、友人は異民族の儀式とみなしているようで、まるで他人事のように話していた。

ところが、タイにおける中国移民の同化はかなり進んでおり、一説によると中国人の血が混ざっていないタイ人を探すことのほうが難しいという。だから、この友人が話していたようなことを相手を選ばずに言ってしまうと面倒なことになる可能性がある。

―――タイは、すでに中国人の手中に落ちてしまっているからね。政治的にも経済的にも、中国人はこの国の支配者なんだよ。強者の価値観は優れているものとして重んじられ、弱者の価値観は劣っているものとして軽んじられる。弱者は強者に追従することを常に強制されるんだ。キミたちタイ人は、中国人に敗れたんだよ。中国系のタイ人だけが勝利して、それ以外のタイ人はみんな敗北したんだ。もう国まで乗っ取られちゃったんだから、いまさら何を言ったところでムダさ。

そのように応じたところ、友人はものすごく不機嫌そうな顔をしていた。愛国心が強いタイ人たちのアイデンティティーは、いったいどうなってしまうんだろうか? 迎合的で日和見主義的なところがあるから、もしかしたら、タイの文化には中国固有の文化も含まれているとか言い出すかもしれない。

それにしても、タイ農民銀行(ガスィゴーンタイ銀行)の看板に書いてある支店名から営業時間までのすべてに、どうして繁体字の中国語が併記されているのだろうか? タイ農民銀行の名称が、なぜ中国語で表記すると泰華農民銀行に変わるのか?

きょうは朝から38.1℃の発熱があったため、スクンウィット13街路にある住まい Sukhumvit Suite 17階の自室で夕方までダラダラと過ごした。日没後になって、春節を前に賑わっているヤオワラート通りへ行って友人と夕食をとった。

  • MBK

    トゥルットヂーンのトゥルツトは学校のタイ語の先生でも説明できませんでしたね。日本でも普通あたりまえすぎて日本語の熟語など外国人に細切れにして聞かれても説明できないことがよくあるので、まあ・・一概に無知とは言えないですよね。逆によく知っていると「ふううん・・言語学者並みに詳しいね」くらいの感想で・・。
     華人は世界中どこでも独特な存在で、私はある意味で評価しています。タイはそれでも華人の同化に成功したほうだと思っています。特に若い人は普通に第一言語がタイ語でアイデンティテイもあたりまえに自分はタイ人であるとしている人が多いようです。

  • MBK

    トゥルットヂーンのトゥルツトは学校のタイ語の先生でも説明できませんでしたね。日本でも普通あたりまえすぎて日本語の熟語など外国人に細切れにして聞かれても説明できないことがよくあるので、まあ・・一概に無知とは言えないですよね。逆によく知っていると「ふううん・・言語学者並みに詳しいね」くらいの感想で・・。
     華人は世界中どこでも独特な存在で、私はある意味で評価しています。タイはそれでも華人の同化に成功したほうだと思っています。特に若い人は普通に第一言語がタイ語でアイデンティテイもあたりまえに自分はタイ人であるとしている人が多いようです。

  • > MBK さん

    僕がタイで語学留学をしていた頃から噂になっていたことなんですけど、本当に語学学校の先生の教養ってそんなに乏しいんですか!? この「トゥルット」(春節)という語は、テレビでも頻繁に字幕付きで登場し、連日のように赤い服を着たリポーターがいろいろと話しています。これは、ニュース番組だけでなく、多くの芸能人が出演する娯楽番組にも登場します。

    もしかしてその先生、衛星放送 UBC の海外ドラマしか見ていないのでは!?と思ってしまいました。是非、機会がありましたら先生の経歴について聞いてみると良いと思います。ちょっとヤバそうな予感がプンプンとしています。

    本文中では面倒になって端折ってしまいましたが、タイ華僑を同化させるのにもっとも有効だった政策は、「小学校4年生以降の中国語課程を禁ずる」という中国語教育抑圧政策にあったそうです。まあ、地方方言の激しい地方の出身者だったため、お互いに中国語でのコミュニケーションが取れず、中国語学校内においても共通語として便宜的にタイ語を用いざるを得なかったという別の事情もあるらしいけれども。

    タイ華人のアイデンティティーについてですが、これはいろいろと意見の分かれるところだと思います。そういった意味でも、タイ華人をよく分かっている人なんかは、関連する論文を書いてみても良いのではないかと思います(僕にはムリそうですけれども)。

    それよりももっと興味深いのはタイ定住日本人のアイデンティティーだと思います。この題材でしたら、僕たちの方がタイ人学者よりも利がありますからね。ちなみに、もし僕がその結論を書くとしたら、きっと2004年にアメリカで公開されたM・ナイト・シャラマン監督のハリウッド映画 The Villege (ヴィレッジ)に擬えてみると面白いんじゃないかとか思っています。

    Those we don’t speak of…

    娼婦との交際が前提となっている社会。絶対にそれに触れてはならない社会。

    非常に興味深いと思っています。ちなみに、The Villege につきましては下記のリンクをご覧ください。きっとビデオレンタル店にも置いてあるのではないかと思います。

    http://www.mypress.jp/v2_writers/ph1583/story/?story_id=1064143
    http://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-village.html

    はてさて、2世代目の日系タイ&日本人に運命やいかに。

    留学当初、ネット上にこのヴィレッジ思考が蔓延していて、タイ人というものを理解するのにかなりの障害になったのを覚えています。まんまとしてやられました。

  • > MBK さん

    僕がタイで語学留学をしていた頃から噂になっていたことなんですけど、本当に語学学校の先生の教養ってそんなに乏しいんですか!? この「トゥルット」(春節)という語は、テレビでも頻繁に字幕付きで登場し、連日のように赤い服を着たリポーターがいろいろと話しています。これは、ニュース番組だけでなく、多くの芸能人が出演する娯楽番組にも登場します。

    もしかしてその先生、衛星放送 UBC の海外ドラマしか見ていないのでは!?と思ってしまいました。是非、機会がありましたら先生の経歴について聞いてみると良いと思います。ちょっとヤバそうな予感がプンプンとしています。

    本文中では面倒になって端折ってしまいましたが、タイ華僑を同化させるのにもっとも有効だった政策は、「小学校4年生以降の中国語課程を禁ずる」という中国語教育抑圧政策にあったそうです。まあ、地方方言の激しい地方の出身者だったため、お互いに中国語でのコミュニケーションが取れず、中国語学校内においても共通語として便宜的にタイ語を用いざるを得なかったという別の事情もあるらしいけれども。

    タイ華人のアイデンティティーについてですが、これはいろいろと意見の分かれるところだと思います。そういった意味でも、タイ華人をよく分かっている人なんかは、関連する論文を書いてみても良いのではないかと思います(僕にはムリそうですけれども)。

    それよりももっと興味深いのはタイ定住日本人のアイデンティティーだと思います。この題材でしたら、僕たちの方がタイ人学者よりも利がありますからね。ちなみに、もし僕がその結論を書くとしたら、きっと2004年にアメリカで公開されたM・ナイト・シャラマン監督のハリウッド映画 The Villege (ヴィレッジ)に擬えてみると面白いんじゃないかとか思っています。

    Those we don’t speak of…

    娼婦との交際が前提となっている社会。絶対にそれに触れてはならない社会。

    非常に興味深いと思っています。ちなみに、The Villege につきましては下記のリンクをご覧ください。きっとビデオレンタル店にも置いてあるのではないかと思います。

    http://www.mypress.jp/v2_writers/ph1583/story/?story_id=1064143
    http://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-village.html

    はてさて、2世代目の日系タイ&日本人に運命やいかに。

    留学当初、ネット上にこのヴィレッジ思考が蔓延していて、タイ人というものを理解するのにかなりの障害になったのを覚えています。まんまとしてやられました。

  • よし

    元カノが同じような事言ってたの思い出しました。

    ここはタイなの!なんで中国人が偉そうにしてるの!と

    餃子を食べに行ったのですが、オーナー夫妻らしき人がビールを飲んでいて

    イサーン系タイ人らしき従業員が忙しそうにしてましたね。

    といいつつ、彼女は中華系の血も入ってて、イサーン系タイ人の事は差別してました。

    当人たちも、複雑な感情が絡み合ってるのかもしれません。

  • よし

    元カノが同じような事言ってたの思い出しました。

    ここはタイなの!なんで中国人が偉そうにしてるの!と

    餃子を食べに行ったのですが、オーナー夫妻らしき人がビールを飲んでいて

    イサーン系タイ人らしき従業員が忙しそうにしてましたね。

    といいつつ、彼女は中華系の血も入ってて、イサーン系タイ人の事は差別してました。

    当人たちも、複雑な感情が絡み合ってるのかもしれません。

ABOUTこの記事をかいた人

2001年に金融機関の社内SEを辞めてタイへ渡り、タイ国立ヂュラーロンゴーン大学文学部が開講している外国人のための集中タイ語講座、インテンシブタイ・プログラムを修了しました。その後、アメリカ・ロサンゼルスにおける語学留学を経て、2006年にヂュラーロンゴーン大学大学院の東南アジア研究科修士課程を修了。以来、機械部品商社の海外営業、生産設備商社の海外営業を経験し、現在は機械メーカーの国内営業部門で海外現法向けの部品輸出を担当しています。