タイの陸軍に徴兵された友人を訪問してみた

「徴集兵(徴兵された兵士)として入隊すると、まず最初に『上官に対する絶対服従』を徹底的に叩き込まれる。上官から肥だめにダイブしろと命じられたら、口答えをせずに、すぐに飛び込まなければならない。平日は、午前中3時間、午後3時間の実戦訓練がある。単純な長距離走から実弾射撃までなんでもあるため、かなりハードで、入隊したときに97キロあった体重も、72キロまで落ちたよ。子供の日(1月14日)に基地が一般開放されたとき、俺たちの高射砲第4中隊には、子供たちを自走高射砲の発射台のうえに乗せる任務が与えられた。上官から『もし子供を転落させてしまったら7日間の営巣入り』と釘を刺されていたから、一日中緊張の連続だったよ」

午後12時35分、プラディパット通りにあるタイ陸軍近衛第1師団砲兵第1大隊の司令部が設置されている基地のゲートを通過した。ゲートには、タイ陸軍のスローガンである เพื่อชาติ ศาสน์ กษัตริย์ และประชาชน(国家、信仰、国王、そして国民のために)という文字が刻まれていた。高射砲第4中隊の司令部兼宿舎がある建物の前にクルマを駐めて、兵舎のブリーフィングルームで兵役に就いている友人から近況を聞いた。入隊前は肌が真っ白だったのに、いまでは日に焼けてすっかり真っ黒になっている。室内には、タイの軍歌 ความฝันอันสูงสุด(至高の夢)の一節にある จะยอมตาย หมายให้เกียรติดำรง(名誉のためには死をも厭わず)というフレーズが掲げられていた。軍隊の価値観が、いかに市民社会からかけ離れているかを実感させられた。

20060122-2@2x強烈なスローガンの数々を眺めているうちに気が滅入ってきたため、気分転換のために司令部兼宿舎がある建物の裏手を散歩してみた。この部隊最強の兵器は M42 ダスター自走高射機関砲(有効射程5,000m, アメリカ陸軍1952~1975年, 陸上自衛隊 ~1988年)でミサイルは配備されていない。こんな装備で敵の爆撃機を本当に撃退できるんだろうか。

タイの徴兵検査は、毎年4月1日からの11日間おこなわれる。タイ国籍を有する満21歳(徴兵猶予者は満22-29歳)の男子は、あらかじめ指定された会場への出頭が義務付けられている。午前7時にタンボン行政区(町)ごとに整列し、午前8時の国旗掲揚後、中佐の階級にある担当者がタイ国軍最高司令官による挨拶文を代読する。出欠の確認で自分の名前が呼ばれてから3回以内に返事をしないと「25条に基づく招集応諾拒否」となり、懲役または科料が課せられる。返事をしたら、靴と靴下を脱ぎ、ズボンの裾をめくって第1テーブルまで走り、①ソートー35召集令状、②国民 ID カード、③ソートー9証明書、④在学証明書(兵役猶予のため)または学位授与証明書(兵役期間短縮のため)を提出し、指紋を登録する。不正防止のため、兵役猶予対象者と兵役期間短縮対象者の腕には召集令状番号が書き込まれる。その後、2番テーブルで軍医による健康診断を受けて、甲乙丙丁(ดี1~4)の4グループに分類される。そして、「徴兵適格者証明書」と言われたら即入隊、「ソートー35」と言われたら召集令状が返却されて帰宅が許される。

朝、バンコクの電脳街「パンティッププラザ」のレストラン S&P で友人と朝食をとった。そこにいた娼婦が、同伴している日本人に対して อานาตะ(あーなーた)と話しかけるのを見聞きしていて、気分が悪くなった。食後、プラディパット通りにあるタイ陸軍近衛第1師団砲兵第1大隊司令部に寄ってから、スクンウィット13街路にある住まい Sukhumvit Suite 17階の自室へ戻って DVD を鑑賞した。夜、プララームサーム通り(ラーマ3世通り)にあるセントラル百貨店へ行って友人と夕食をとった。

タイの徴兵制度

2005.05.13

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バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。