バンコク郊外にある中間層向けの分譲住宅地

「持ち家を購入することは、タイ人の人生においてとても重要なイベントよ。たとえ、それが郊外にあるとしても、持ち家に住む喜びは、都心にあるどんなコンドミニアムにも勝るわ」

午後5時半、タイ国道305号ラングスィット・ナコーンナーヨック線沿いのムーバーン(集落)にある友人宅で、友人が小声で言った。

バブル景気の追い風に乗って、バンコク首都圏ではコンドミニアム(分譲マンション)や都市型ムーバーン(分譲住宅地)の開発ラッシュが続いている。このムーバーンは、アソーク交差点から北北東に25キロも離れているパトゥムターニー県クローングスィーにある。すでに全戸(約200世帯)が売約済となっているが、まだ半数以上が未完成のままで、仕事を終えて家路へ急ぐ建設作業員たちがムーバーンの入口へ向かって歩いていた。

「でも、ここはちょっと田舎すぎるけどね」

その横から、ウォングウィアンユィースィップソーングガラッカダー(旧市街にある7月22日ロータリー)付近に住んでいる別の友人がツッコミを入れた。それを聞いた家主は軽いノリで反論した。

「いやいやいやー、それは間違ってるね。この一帯は、タイ語で『郊外』って言うんだよ。キミはそんなことも知らないのかい?」

この友人の新居は、1世帯あたりの敷地面積が72平方メートル(約22坪)のバーンフェート(1棟に2世帯が入居しているタウンハウス)で、間口の幅は6メートル。タイで標準的とされているバーンフェートより間口が2メートル広い。間取りは3LDKで、1階にリビングをはじめダイニングキッチンやシャワー室兼トイレ室があるほか、2階には寝室が3部屋あって、第2シャワー室兼トイレ室、第3トイレ室がある。玄関口にある可愛らしい花壇は、自分で選んできた花を園芸業者に植えさせたという。分譲価格は1,460,000バーツ(約450万円)で、そのほかに内装費や家具をそろえるための費用としておよそ400,000バーツ(約120万円)かかっている。日本(同じような条件の千葉県流山市の場合)だと25,600,000円ぐらいはする物件だ。坪単価(≒1.21ワー)は、タイ国道305号ラングスィット・ナコーンナーヨック線沿いにあるクローングスィー付近で8,500バーツ(25,500円)、千葉県流山市向小金2丁目付近で107,000円であるから、タイの地価は日本のだいたい4分の1という計算になる。

この一帯には、まだまだ空き地も目立つが、見栄えが良い、警備員つきのムーバーンが次々と造成されている。バンコクのベッドタウンは、県境を越えてその近隣県にも拡大している。あと15年もすれば、都心とベッドタウンを結ぶ近郊通勤電車が走るようになるかもしれない。

――近い将来、「昔このあたりには10m幅の私道が作れるほど土地が余ってたんだよ」と、自分の子供たちに語って聞かせられる日がおとずれるかもよ。

帰り道で、ウォングウィアンユィースィップソーングガラッカダー付近に住んでいる友人が彼氏に「わたしもこんな家に住みたい」と言ったところ大喧嘩になったという。

夕方、パトゥムターニー県クローングソーングのムーバーンにある、友人が PS2 で遊びながら土地を販売している不動産開発会社の営業拠点に寄ってから、クローングスィーのムーバーンにある友人宅へ向かった。クローングソーングにあるドイツ風料理屋 Country Place で友人たち6人と夕食をとり、ふたたび友人宅へ戻ってビールを飲みながらカラオケを楽しんだ。1枚の DVD に100曲以上のカラオケが収録されている Unseen Group の Best of the Year シリーズがあれば、7時間は連続して熱唱することができる。

午後零時すぎ、酔いを覚ますために外へ出て、タバコを吸いながら星空を見上げた。将来、あの頃が人生で一番楽しかった、と振り返る日がやってくるかもしれない。

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。