友人の訴追通告書 その2 タイ弁護士評議会

「これは重大な倫理規程違反だ。○○弁護士事務所が主張しているような財産分与に、法的な根拠はまったくない。しかも A にはその主張を証明するための手段もない。訴訟になれば、疑いなく A は敗訴する。もし A の代理人が本当に民事で争うようなことがあれば、なんとも愚かなことだ。この事案は、 A とその代理人が、 B から不当に財産を奪うために企図されたものにすぎないから、もし実際に告訴状が送られてきたらもう一度ここへ来て相談してくれ。相談料無料で勝訴を勝ち取り、さらに反訴して多額の賠償金をせしめてやろうではないか」

午後、ラーチャダムヌーングラーング通りにあるタイ弁護士評議会へ友人たちと出かけた。きょうは昨晩のふたりに加え、成田からスリランカへ行く便の乗り換えのためにバンコクに滞在している高校時代の友人も参加している。1階には無料法律相談のブースが6つあって、それぞれふたりずつの弁護士が市民たちからの相談に応じていた。総合案内カウンターで事件のあらましについて説明し、順番を待ってから相談ブースへ入ると、弁護士がそのように話していた。

弁護士によると、実際に告訴されてからのほうがいろいろとやりやすくなるということだったので、友人 B は A の代理人から告訴状が届くのを待つことにした。B によると、くだんの弁護士事務所は、このような手紙を法律の知識がない女性に対して送りつけて萎縮させ、サインを迫って財産を奪い取ることが上手いことで知られているという。

「幸い、われわれは愚かではなかった。それだけでも幸運だった」

というのはバンコクに滞在している友人の言。

「もう本当にウンザリだわ」

友人 B は深いため息を吐いてから、短いがもっとも直接的な感想を口にした。また、友人 B と高校時代からの親友でもある別の友人はつぎのように総括した。

「 B は A の浮気性に愛想を尽かせて A を切ったというのに、こんな別れ方をしたら、それこそ B がどんなに頑張ったところで、A との交際は『美しい青春の想い出』にはならないでしょうね。すんなりキレイに別れておけば、あとでよりを戻すことだってできたかもしれないのに、なんと愚かな・・・・・・」

それにしても、バンコクで無料法律相談ができるとは意外だった。

午後、スクンウィット5街路にあるタイ料理屋へ行って、昨晩のふたり組に加え、あらたに成田からスリランカへ行く便の乗り換えのためにバンコクに滞在している高校時代の友人と合流した。ラーチャダムヌーングラーング通りにあるタイ弁護士評議会へ行って無料の法律相談を受けた。夕方から、スクンウィット13街路にある住まい Sukhumvit Suite 17階の自室でタームペーパーを書いた。この時期、タームペーパーで忙しいというのに、興味深い事件がなかなか後を絶たない。まったく喜ぶべきなのか、それとも貴重な時間が浪費されたと嘆くべきなのか。