友人の訴追通告書 その1 警察署

20040909c

『通告書 ―― 2544(西暦2001)年以来、依頼人 A は B と寝食をともにしながら事業を営んできた。したがって、依頼人 A と B のあいだには、事実上の婚姻関係があったものと認められる。すなわち、依頼人 A には、当該事業によって得られた資金の半分を受け取る権利がある。よって、当方は B に対して、乗用車、オーブン、冷蔵庫、洗濯機、作業台、コンピュータ等に関する物権のうち半分を依頼人 A へ譲渡するように要求するものである。○○弁護士事務所は、本日から起算して7日後まで交渉に応じる用意がある。誠意ある回答が得られなければ、民事訴訟手続にのっとり B を告発する』

きょう、ヂャン通りにある友人 B の家に弁護士事務所からの内容証明郵便が届いた。友人 B は、B の実家で B 家が全額を出資しているケーキ工場を営んでおり、毎月約60,000バーツの利益を得ている。一方、現在失業中の A は、過去数年間にわたって B の実家に「恋人」として住み込みで働き、ケーキを宅配することで B 家から毎月15,000バーツの給与のほか、必要に応じて都度現金を受け取っていた。

もし弁護士事務所がこの訴追通告書で主張していることが正しいと仮定すれば、タイでは事業を分担して営んでいる未婚のカップルの関係が破綻したときには、通常の離婚と同じように財産を分与しなければならないということになる。しかし、この弁護士事務所の主張にはいくつかの疑問点があった。

  1. 婚姻届を提出しておらず、婚約もしておらず、子供もいない男女を、長期間同棲していたという理由だけで「事実上の婚姻関係にあった」とみなすことが本当にできるのか?
  2. A が B の家で働いていただけのことを、 A と B の共同事業とみなすことが本当にできるのか?

そこで、僕なりの解釈を打ち立てて、民事訴訟に応じるよう友人 B に提案した。

「 A は、 B 家が全額出資しているケーキ工場で宅配係として住み込みで働き、月給を得ていた。したがって、 A と B のあいだには明らかな雇用関係があったと認められる。 B 家は、B と A の恋人関係が破綻したことにともない、労働者保護法の定めにしたがって雇用契約を解除したにすぎない。よって、当該事業を A と B による共同事業とみなすことはできず、物権を譲渡する必要もない」

その後、バンコク警視庁のワットプラヤーグライ警察署へ友人ふたりと行って、いつものように事のあらましについて生活安全課のバントゥックプラヂャムワン(きょうの出来事)に記録してもらった。そうすることで、後日もし問題が起きたときに、警察に対して捜査の要請がしやすくなる。

ついでに、当直の警察士官に、今回の件に関する法的な解釈について尋ねてみた。回答はつぎのとおりだった。

「この内容証明郵便に法的な拘束力はまったくない。弁護士事務所は、依頼人の要望にしたがって手紙を書いて送りつけてきただけにすぎない。手紙に書かれている文言は、依頼人の主張がただ一方的に述べられているだけであって、脅迫する意図があったとは認められない。警察士官学校で教わった高等裁判所の判例には、結婚前の共同財産といった概念はなかったものと記憶している。いずれにせよ、これは警察署ではなく裁判所が扱うべき問題だ」

あす、ラーチャダムヌーングラーング通りにあるタイ弁護士評議会へ行って、民事裁判のセオリーにしたがって、相手側の弁護士に対して懲戒請求を出してみようと思う。もしかしたら驚いて、この事件から手を引いてくれるかもしれない。

ちなみに友人 B によると、 A と弁護士は古い友人関係にあるという。なお、本文中の B はブーラパー大学中退の女性、 A はアサンプション大学中退の男性だ。

昼すぎ、スィーロム通りにある珈琲屋へ友人たちと出かけてタームペーパーを書いてから、午後11時頃にサートゥプラディット3街路にあるカーオカームー屋へ行って別の友人と夕食をとって帰宅した。その後、 B から友人のもとに電話があって、興味本位で友人たちとワットプラヤーグライ警察署へ行ってみた。

友人の訴追通告書 その2 タイ弁護士評議会

2005.09.09

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2001年に金融機関の社内SEを辞めてタイへ渡り、タイ国立ヂュラーロンゴーン大学文学部が開講している外国人のための集中タイ語講座、インテンシブタイ・プログラムを修了しました。その後、アメリカ・ロサンゼルスにおける語学留学を経て、2006年にヂュラーロンゴーン大学大学院の東南アジア研究科修士課程を修了。以来、機械部品商社の海外営業、生産設備商社の海外営業を経験し、現在は機械メーカーの国内営業部門で海外現法向けの部品輸出を担当しています。