『通告書 ―― 依頼人 A は2544(西暦2001)年以来、 B と共同で生活し事業を営んできた。したがって、依頼人 A と B のあいだには、事実上の婚姻関係が成立していたと認められる。すなわち、依頼人 A には、当該事業によって得られた財産の半分を受け取る権利がある。よって、当方は B に対して、乗用車、オーブン、冷蔵庫、洗濯機、作業台、コンピュータ等に関する物権の半分を A に譲渡するよう要求するものである。○○弁護士事務所は、本日を起算日として7日後まで交渉に応じる用意がある。誠意ある回答が得られなければ、民事訴訟手続に則り B を告発する』
ヂャン通りにある友人 B 宅に、弁護士事務所からの書留郵便が届いた。友人 B は、B の実家で B 家全額出資のケーキ製造工場を営んでおり、毎月約60,000バーツの収入がある。一方、現在失業中の A は、過去数年間 B の実家に「恋人」として住み込みケーキを宅配することで、 B 家から毎月15,000バーツの給与のほか必要に応じて現金をもらっていた。
訴追通告書によると、タイでは未婚の恋人同士が作業を分担して事業を行い、関係が破綻したときには、財産の半分ずつに分けなければならないということになる。しかし、弁護士の主張にはいくつかの疑問点がある。
1. 婚姻届を提出しておらず、婚約もしておらず、子供もいない男女を、長期的に同棲していたという理由だけで「事実上の婚姻関係にあった」とみなすことができるのか?
2. A が B 家の事業に関わっていたことを、 A と B の共同事業とみなすことができるのか?
そこで、僕なりの解釈を打ち立てて、民事訴追に応じるよう友人 B に提案した。
「 A は、 B 家全額出資のケーキ工場で宅配係として住み込みで働き月給を得ていた。したがって、 A と B のあいだには雇用関係があった。 B は、 A との恋人関係が破綻したことで、労働者保護法の定めにしたがって雇用契約を解除した。よって、当該事業を A と B による共同事業とみなすことはできず、物権を譲渡する必要もない」
その後、バンコク警視庁ワットプラヤーグライ警察署へ友人2人と行き、いつものように「今日の出来事」に記録してもらった。そうすることで、後日問題が発生したときに、警察の捜査がやりやすくなる。
ついでに、当直の警察士官に、今回の件に関する法的な解釈について尋ねた。回答はつぎのとおり。
「この手紙自体に、法的な意味はまったくない。弁護士事務所は、依頼人の要望通りに手紙を書いたにすぎない。手紙に書かれている文言は、依頼人の主張が一方的に述べられているだけで、脅迫する意図があるとは認められない。警察士官学校で習った高裁判例には、婚前前の共同資産という概念はなかったと記憶している。いずれにせよ、これは裁判所が扱うべき問題だ」
明日、ラーチャダムヌーングラーング通りにあるタイ弁護士評議会で、セオリー通りに相手側弁護士に対する懲戒請求をしてみるつもり。もしかしたら、驚いて事件から手を引くかもしれない。
ちなみに B によると、 A と弁護士は古い友人同士という。また、本文中の A はブーラパー大学中退の女性、 B はアサンプション大学中退の男性。
昼すぎ、スィーロム通りの珈琲屋で友人たちとタームペーパーを書いてから、午後11時頃にサートゥプラディット3のカーオカームー屋で別の友人と昼食をとって帰宅した。その後、 B からの電話が友人にあり、興味本位でバンコク警視庁ワットプラヤーグライ警察署へと出かけた。