ムーガタ屋

「どうして今日の夕食が『ムーガタ』になってしまったかというと、実は・・・・・・ユーちゃんが『もう長いことムーガタ屋へ行っていないから味を忘れちゃった』と言い出したからなの。それにしても、いつ食べても酷い料理よね。みんなももう懲りたようだから安心して」

夜、ラームカムヘーング36街路にあるムーガタ屋からプララームガーオ41街路にあるアイスクリーム屋へ向かうクルマのなかで、友人がそう言った。

現在、ムーガタ屋はバンコクの都内に急増している。みんなで鍋(=ガタ)を囲んで豚肉(=ムー)を突きながら酒を飲んで、だらだらと時間を過ごすといった店で、コンセプトだけなら、日本にある寿司・焼肉食べ放題の店と同じような位置づけにある。鍋は、豚肉のほか、鶏肉や海鮮類を焼くための鉄板と、野菜類や麺類を茹でるための鍋が一体となっている。脂分が多い安物の食材をその中へ突っ込んで、辛いムーガタのタレに漬けてから食べる。この店は都市部の中流層以下をターゲットとしているため、手頃な価格に設定されている(時間無制限ひとり79バーツ~89バーツ)。店内の様子を見渡してみると、その客層の低さに驚く。

しかし、こんな料理では、食事をとりに来ているのか、はたまた太りに来ているのか、分からなくなる。服には焼肉屋独特のあの臭いがこびり付き、口の中も脂分でベタベタになった。顔全体が油ギッシュな厚い膜で覆われている。とうとう堪らなくなって、食後にアイスクリーム屋に寄って口直しをした。午後9時に帰宅し、翌日の午前3時までペーパー作業を続けた。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。