プラプラデーングの夜

「分かってるわコラ! このマザーファッカー。くそヤーバー100錠だろ。バーロー」

午後11時頃、サムットプラーガーン県にあるプラプラデーング港では、近所に住んでいる中学生たちがシンナーを吸い、高校生たちが麻薬を取引し、男たちが壁にもたれかかって放心状態となっていた。ヂャーオプラヤー川に沿って設置されているベンチでは、停電しようものならすぐにでも行為を始めてしまいそうなカップルたちが鈴なりになっていた。人々が麻薬を使っている現場をこんな簡単に目の当たりにできるところは、バンコク広しと言えど、ここをおいてほかにはないだろう。

午後、ヂュラーロンゴーン大学の文学部4号館へ行って、ミャンマー研究の講義に出席してから、珈琲屋で日本人の友人と合流し、そこから高架電車プロームポング駅のすぐちかくにある日本料理屋「新潟」まで行って夕食をとった。そこで「これまで行ったことがない場所へ行こう」という話になった。

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これまでずっと気になっていた場所がある。そこは、プララームスィー通りの南、ヂャーオプラヤー川を挟んでクローングトゥーイ港の反対側にある「空白地」だ。都心部からそれほど離れていないこの土地が、どうして空白地のままになっているのだろうか。

サムットプラーガーン県プラプラデーング郡(73.4km2, 181,586人)は、トンブリー朝のタークスィン大王(1734-1782)の治世に港湾として開発された。ラッタナゴースィン朝のプラプッタルートラーナパーライ王(1766-1824, ラーマ3世)の治世になると、ビルマ族の南進によって難民化したモーン族を労働力としてここへ強制的に移住させて、それまで中断されていた港湾建設が再開された。

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そのような歴史的背景から、プラプラデーング郡の開発は長いあいだ軽視され続けてきた。そのため地価は安く、都市部の建設現場で働いている非熟練労働者たちが多く住み着いて、いわゆるスラム街を形成している。さらに、その対岸には麻薬の集積基地と目されているクローングトゥーイ港やクローングトゥーイスラムがあるため、この一帯には麻薬が蔓延している。現在、バンコク都内の交通渋滞を緩和させるために、ヤーンナーワーとプラプラデーングを結ぶ鉄橋が87億バーツの予算を投じて建設されており、開通後の発展が期待されている。

午後10時半頃、プラプラデーング郡バーングヨー町の薄暗い田舎道をクルマでゆっくりと走っていたところ、「麻薬検問」の看板が光る常設の簡易検問所で、ふたりの警察官が警戒にあたっていた。その後、カーオサーン通りに寄ってから帰宅した。

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