友人の退職 (カンボジアドライブ 3日目)

「あ、もしもし? けさ、会社を辞めてきたから、これから自分で事業をはじめようと思う。ほら、あのサイドビジネス。これまで仕事を頼んでいた友人たちは、あまりにもカネがかかりすぎていたし、仕事の腕前もイマイチだったから、あらたにチームを組み直して、イチから出直してみる」

昼前、ヂャンタブリー市内にあるガソリンスタンドで給油をしていたときに、携帯電話に着信があって、電話越しで友人がそのように話していた。上司からの圧力に耐えられなくなったというのが、おそらく本音のところだろう。以前から、「顧客の新規開拓には際限がない。こんなことを続けていたのでは、いつまで経っても安寧の日は訪れないし裕福にもなれない」とこぼしていたから、もしかしたらタイの資本主義における「ヂャーオナーイの世界」の本質にようやく気づいたのかもしれない。タイに住んでいると、被雇用者がどのように搾取され、それを原資に大小さまざまな資本家たちがどのようにして豊かになっていくのか、その過程を窺い知ることができる機会はいくらでもある。

いずれにしても、転職型労働社会のタイでは、どうせ会社を辞めたところで、これまでのキャリアがフイになったり、それ以降の収入が半減するわけではないから、自分が責任を負うことができる範囲で冒険をしてみるのも悪くない。もし仮にいま考えているビジネスがうまくいかなくても、またサラリーマンに戻れば良いだけの話だ。

夕方、スラウォング通りにあるマッサージ屋 King’s Body House へ行って、タイ古式マッサージ(330バーツ)を受けて旅の疲れを癒した。ここのマッサージには、按摩などの日本人向けのメニューも含まれているため、けっこうキモチイイ!

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。