タイ語の理系文献は外来語に支配されている

)แสงอัลตร้าไวโอเลตไม่ใช่เหรอ(セーングアントラーウァイオーレートマイチャイロー?”
「セーング・アントラーウァイオーレートじゃないの?」

)ไม่ใช่น๊า ต้องเป็นแสงอุลตร้าไวโอเลตสิ(マイチャイナー・トングペンセーングウントラーウァイオーレートスィ
「いや、それはセーング・ウントラーウァイオーレートのはずだ」

西洋の価値観が大量に流入した明治初期、日本ではそれまで日本語になかった語彙や概念を和訳する過程において膨大な数の和製漢語が作られ、日本語の語彙数は飛躍的に増加した。明治後期になると和製英語で対応されるようになり、現在では英単語をそのままカタカナで表記している。ところが、タイ語は外国語の語彙をそのまま借用しているため、どれだけタイ語が読めたとしても、専門分野の英単語を知っていないとタイ語の専門書は理解できない。タイの小中学生たちがこんな外来語だらけの教科書を見たら、拒絶反応を起こして勉強する気も失せるのではないだろうか。

専門分野の英単語の例

  • 【酸素】 Oxygen – ออกซิเจน (オークスィヂェーンと発音する)
  • 【窒素酸化物】 Nitrogen Oxides – ไนโตรเจนออกไซด์ (ナイトローヂェーンオークサイと発音する)

タイ語に外来語の語彙が多いのは、もともとタイ語訳された専門書が貧弱で、もし専門的に学ぶのであれば将来的に英語で書かれた文献に頼らざるを得なくなる、といったタイ特有の事情がある。どうせ英語の文献を読まざるをえなくなるのなら、最初から専門用語を英語のまま覚えておいたほうが効率が良い。

午後、スィーロム通り沿いにある珈琲屋 Bug and Bee へ行って、日本語で書かれている理学書をタイ人の友人たちに協力してもらいながらタイ語に翻訳した。政治経済の分野なら自分ひとりで楽勝に翻訳できるが、高校化学を日本語で習っている僕にとっては、想像以上に難解で面倒な作業となった。いつもは辞書を使わないで翻訳しているが、今回ばかりは辞書を片時も手放せなかった。しかも、誰が読んでも分かるようなタイ語に仕上げるために、化学の知識がある友人たちに協力を仰いだ。翻訳するにあたっては、小川日出夫編の「9,000語 専門用語辞典 (日本 – ไทย – English)」を使用した。

ちなみに、冒頭にある「セーング・ウントラーウァイオーレート」とは、 Ultravaiolet Rays のことで、日本語では紫外線と呼ばれている。個人的には แสงที่นอกคลื่นแม่เหล็กไฟฟ้าของแสงที่มองเห็นสีม่วง (紫色電磁波可視外光線)のように完全なタイ語で表記したかったが、外国人がタイ語にない語彙をあらたに創作したところで意味がないのでやめておいた。