パブにおける雰囲気を維持するための集客活動

「女性4人で同時に入店するか、もしくは入店時に4人以上の学生証を同時に提示したお客様には、 Johnnie Walker Red Label を499バーツにてご提供いたします」

そのように書かれていたチラシと学生証を持って、ラッチャダーピセーク4街路にあるパブ Rad へ入った。

日本で「クラブ」と呼ばれている娯楽施設は、バンコクでは2種類の呼び名で親しまれている。ひとつは「テック」と呼ばれている従来型のディスコ、もうひとつは「パブ」と呼ばれているライブハウス型の飲み屋だ。

娯楽施設における流行のサイクルは極めて短いため、店の命運は客層の変化によって大きく左右される。

流行の牽引役とされているのは現役の大学生たちで、大学生たちは流行の最先端を行っている「イケてる」店へ足を運ぶ。大学生の客が定着してくると、その店の評判が口コミで知れ渡り、次第にバンコク中の老若男女たちが集結するようになる。

ところが、女子大生を目当てにやってくる中高年の男性が一定の割合に達すると、次第に女子大生たちから敬遠されるようになり、ナンパのターゲットである女性客が一時的に不足する。その合間を縫って、貧しい娼婦たちが裕福な男性客の玉の輿に乗ろうと大挙して押し寄せてくる。

店内における娼婦の割合が増えるとナンパの難易度が急激に下がるため、それを好感して(現役女子大生が娼婦たちにリプレイスされていることに気づいていない)男性客が一気に増えて、店内はナンパ目当ての比較的裕福な男性客と、玉の輿狙いの手ぶらの娼婦たちで溢れかえり、最後の大フィーバーを迎える。

が、娼婦狙いの中高年が増える頃には、男子学生たちも事の次第に気づいて別の店へシフトしていく。こうして、娼婦と中高年男性の巣窟となり果てた店は、「イケてない」の烙印を押されて廃れていく。

女性客と現役大学生を集客するためのチラシ

女性客と現役大学生を集客するためのチラシ

パブを継続して運営していくためには、恣意的な集客活動が必要となる。つまり、誰が必要で、誰が必要でないかを明確にして、客層を常にコントロールしていかなければならない。そのため、店内の雰囲気を作り上げるうえでコアとなる「女性客だけのグループ」(ナンパの機会を男性客に与え集客する)や「大学生たち」(流行の旗手を集めてイケてることの証とする)を、いかにして一定以上の割合で確保していくのかが鍵となる。今回のキャンペーンの背景には、破格の安値でウイスキーボトルを放出しても、ターゲットとなる客を集めたいという店側の思惑が見え隠れしていた。

しかし、店の雰囲気を悪くする要因となる娼婦や中高年の男性も、店にとってはカネを落としてくれる大切な客である。娼婦も、店内にいる「女性客」の総数を実際より多く見せかける効果があるため、無理に排除する必要はない。それに、どちらもほかの客にとっては目的達成のための障害とはならないし、自分が関わらずにいられればそれで良いと考えられているため、誰かに相手にしてもらえることもないが、かといって店から追い出されることもない。

将来、バンコクに駐在することになったときに、気晴らしに出かけたパブで誰からも相手にされないという事態に直面する可能性も考えられる。誰からも相手にされていないのにパブを楽しめるはずはないし、この種の娯楽はある程度の年齢に達したら卒業しなくてはならないものだから、それまでにパブの代わりとなる場所をどこか探しておこう。

3月から続いてきた夏休みもついに終わり、きょうから前期の授業が始まった。いつもより2時間も早い午後7時にはベッドから出て身支度を済ませ、ためしに午前と午後の講義に出席してみた。クラスメイトたちと相談した結果、午前中の授業は履修しないことにした。その後、ラッチャダーピセーク4街路にあるパブ Rad へ友人たちと繰り出して、友人の誕生日を祝った。

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。