タイ人向けの「心のパブ」

「ここに来るのは一回だけで十分かな? ハイソな雰囲気はいいんだけど、人間っぽさがなくて退屈なのよね。ちょっと、そのフライドポテトを食べ終わったら、さっさとウイスキーボトルを持って店を出ましょうよ。ちょっと遠いけど、絶対に気に入ってもらえる店を知っているから紹介してあげるわ」

新生 Royal City Avenue にあるパブ探検の第2段として、前回の Slim に続いて、今回は Route 66 East へ入ってみた。ヒップホップ中心の選曲で、日本のダンスミュージックも流れていた。

ナンパをするためにパブへ遊びに行くのなら、不特定多数の男女が入り混じっている都市部の大箱のほうが良いかもしれないが、今晩は男女のふたり組で行動していたため、ナンパをする必要はなかったし、聞いても分からないような洋楽ばかりで面白くなかった。

そこで、プララームガーオ8街路に路上駐車していたクルマを出して、ラートプラーオ107にあるパブ Halo Haloo へ向かった。

20050531-2「姐さん、昨晩の乱闘事件だけど、大丈夫だったかい?」

――おかげさまでなんとか無事よ。あのとき、わたしもウイスキーボトルの口の部分を持っていて、なにかあったらすぐに叩き割って戦闘に参加できるように準備を整えていたし。

「実は、あのあと店内でもの凄いものを見つけちまったんだ。裁判所の出頭命令書で、殺人幇助の容疑と書いてあった」

薄暗い店のなかに入ると、友人とゲイの店員が物騒な話をしていた。帰りのクルマのなかで尋ねてみると、つぎのように話していた。

「わたしたち5人は昨晩、この店で酒を飲んでいたんだけど、閉店間近になって知らないオトコがわたしにつきまとってきたの。相手はかなり酔っぱらっていたみたいで、メチャメチャ強引だったから仲間たちが引き剥がしてくれたんだけど、乱闘騒ぎになってしまって・・・・・・」

閉店間近になると、この店はタイポップスの生演奏で大いに盛り上がる。しかも、トーングロー通りや RCA のようにオシャレなスポットではないため、みんなノリノリになって大合唱をしながら信じられないぐらいヘボいダンスをしていた。思わず僕も立ち上がって、みんなと一緒に踊り出した。

夜、地下鉄ラートプラーオ駅前にある Central 百貨店で友人と待ち合わせ、スコールのなかクルマを走らせて Royal City Avenue へ向かった。プララームガーオ8街路にあるパブ Slim 前に駐車して、 Route 66 East に入った。約1時間後、ラートプラーオ107街路にあるパブ Halo Haloo へ移動し、ウイスキーグラスを片手に閉店時間まで激しく踊り続けた。

タイ人が気持ちよく踊れる「心のパブ」は、流行の店ではなく、もしかしたら「行きつけの店」にあるのかもしれない。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。