脱サラ駐在員による出資詐欺

友人の日本人の会社社長はいま、日系IT企業のタイ現地法人で責任者を務めている日本人駐在員が独立して設立する新会社に対して、資本金1500万バーツの25%にあたる300万バーツの出資を検討している。のこりの1200万バーツについては、いま出資を募っている日本人駐在員のほかに、タニヤ界隈のカラオケスナックで出張中に知り合ったという日本在住の会社員男性ふたりがそれぞれ折半して出し合うという。

そこで今晩は、日本人駐在員から新会社の事業計画について聞き取りを行うために、友人の会社社長から依頼されてスクンウィット11街路にあるトンカツ屋「勝一」へ行った。

ベンチャー企業の将来性については事業計画書に目を通せば大体の見当がつくし、現実味のない数字が並んでいるような希望的観測にもとづく事業計画は必ず失敗する。バンコク在住の日本人出資募集男に対して、そのあたりのことを徹底的に追求したところ、あろうことか逆上して、「カネは夢や希望を提供するオトコの元に集まるんだ」と言い放った。配当金を支払うつもりなんか端から毛頭ないという。そういうことなら、この話は、出資じゃなくて、単なる「カンパ」ということになる。

バンコクには脱サラをして背水の陣を敷いている経済的に不安定な日本人がたくさん住んでいる。そのため、出資詐欺は一度に多額の現金を騙し取ることができる効果的な手法として多用されている。ところが、バンコクの日本人社会におけるそのような特別な実情を知らず、また、情報不足が原因でタイにおける経営環境を正確に把握することができない日本在住の日本人たちは、出資募集男が描いているようなバラ色の話を鵜呑みにして、無謀な出資話に次から次へと引っかかってしまう。

タイにも技術はあります。タイ人にも専門家はいます。すくなくとも、なにをやっているのか分からないようなバンコク在住の一部の日本人たちよりは優れています。日本人だからって、誰が何をやっても成功するというわけではありません。くれぐれもお気をつけて。

この出資募集男の口車に乗せられた3人の日本人が、今回合計で1,200万バーツを棒に振った。

きょうは昼過ぎに日本から旅行に来ている高校時代の友人と昼食をとってから、別の友人の出資話を聞きに行った。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。