大津波後のバンコク市民

タイでも日本と同じように、有名人はゴシップのネタとなるために存在しており、マスコミがさまざまな事象について視聴者に分かりやすく伝達しようとするときに重宝されている。

きのう12月26日のタイ時間午前7時58分、インドネシア西部のスマトラ島北西沖のインド洋でマグニチュード9.1の大地震が発生した。その津波はタイの西海岸だけではなく、インド、スリランカ、マレーシア、インドネシアをはじめとする東南アジアの全域に押し寄せ、多数の死者・行方不明者を出している。死者・行方不明者リストの筆頭には、元大臣のボーロンマ・トンティアン氏(パンガー県のリゾート地から約40メートルのところで遺体として発見)をはじめ、チャンネル3のテレビドラマ「トム」に出演していた俳優のオン=サラーウット・マートラトーング氏(グラビー県へ旅行中に消息不明)、音楽事務所「RSプロモーション」所属の新人歌手で5カ国語を操るナーターン・オーマーン氏(スリン島へ移動中に消息不明)、俳優のギング=パッタラー・ティワーノン氏(ピーピー島に渡ったが無事が確認されている)らの名前が挙がっている。

「ニュースでオンがパンガーで行方不明になっていると聞いたけど、田舎に帰っている○○ちゃんは無事なの?」

「無事だってさ。昼前に電話がかかってきて、そう言ってたよ。そうだ、オマエはもう募金をしたか? 俺はさっき募金箱に2万バーツ入れてきたぜ」

(『ほぉ~』という感嘆の声とともに、周囲から『金持ちだなあ』という声上がった)

ヂュラーロンゴーン大学文学部の4号館へ行って午前中の講義に出席してから、マーブンクローングセンターの1階にある美容室でストレートパーマをかけていたところ、美容師たちが今回の大津波について話し合っていた。美容師たちの話は、見たことも聞いたこともない「津波とは何か」ということから、行方不明になっている芸能人や知り合いの安否まで多岐にわたった。

タイのテレビ局 ITV は、プーゲット県内にある小学校や中等教育学校が壊滅的な被害を受け、リゾート地にあるホテルの地下では多数の遺体が発見されたと報じている。グラビー島にあるピーピーホテルでは、建屋の3階まで波を被ったという。旅行者の安否に関する情報については、観光警察 1155 または観光庁コールセンター 1172 まで問い合わせるよう、タイ語・英語・日本語の3カ国語で呼びかけている。

タイ観光協会事務長のチッダチャイ・サークロッバディー氏は今回の大津波について、自然災害であり、タイの観光業にとっては南部で頻発しているテロほどのダメージはないとの見方を示している。タイ航空上席取締役のガノック・アピラディー氏は、医師の診断書を持参した被災者には無料でサービスを提供すると発表した。

タイの観光業が受けた人的・物的な被害は計り知れず、今後の復興が思いやられる。タイ人のなかではテレビ局が作り上げた今回の被災地義援金ブームに乗じて、募金した金額を競い合う動きが出始めている。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。