窃盗事件被疑者体験記 前編

「ちょっとぉ、飲みすぎちゃって運転できないっぽい。悪いんだけどぉ、ほかに頼める人がいないから、迎えに来てくれないかしら」

午後11時半、寝る前のシャワーを浴びてから寝室へ戻ると、外出先で泥酔している友人から電話があった。最初のうちは断るつもりでいたが、電話口で再三にわたって懇願されたため、やむなくスクンウィット13街路にある住まい Sukumvit Suite の前からタクシーに乗ってラッチャダーピセーク4街路にあるパブ街へ向かった。

「途中まで運転してくれる人を見つけたから、スクンウィット17街路の入口で待ってて」

アソークモントリー通り(スクンウィット21街路)を北上中に、急遽待ち合わせ場所が変更になったため、タクシーの運転手に言ってスクンウィット通りへ引き返した。スクンウィット17街路の入口で友人のクルマの運転をマハーナコーン工科大の男子学生から引き継いで、そこからウィパーワディーラングスィット通りにある友人の実家まで送り届けるつもりでいたが、友人が「こんな状態じゃ家に帰れない」というので仕方なくウチに泊めることになった。

友人のクルマを Sukhumvit Suite の駐車場に停めてから助手席でぐっすり寝入っている友人を起こそうとしたが、ひどい酩酊状態で身動きがとれない様子だった。しかし、一緒に駐車場で夜を明かすのは気が進まないし、かといって友人をクルマのなかに置き去りにするわけにもいかなかったから、コンドミニアムの警備室に連絡を入れて友人を17階の自室まで運ぶのを手伝ってもらい、引きずるようにして玄関の中へと押し込んだ。これ以上は僕ひとりでは動かすことができなかったため、そのまま友人を玄関前のタイル張りの床の上に放置して寝室へ戻った。