サンガンペーング温泉 その2

「やっぱり30バーツじゃなくて、50バーツにしてもいいかい? 個人的にはまったく不公平でおかしな話だとは思っているけれど、観光庁からの通達で、市内からサンガンペーングまでの外国人向けの運賃は50バーツということになっているから・・・・・・」

サンガンペーング行きのスィーロー(トラックの荷台タクシー)の運転手は、チアングマイの中心部にある市場から少し離れた路地で出発までの時間をつぶしていた。彼にはチアングマイ市内随一の名門中等教育学校に通っている中等教育学校4年生(高校1年生)の娘がいるそうで、今学期はフランス語で4(優)の成績をもらったと嬉しそうに話していた。初めのうちは僕のことをバンコクから旅行に来ているタイ人観光客だと思っていたようでタイ人向けの運賃を提示してきたが、出発までの1時間にわたって話し込んでいるうちに外国人であることがバレて、申し訳なさそうに外国人向けの運賃を提示してきた。

「チアングマイは本来とても活気のある街だが、ご覧のとおり週末になると誰も家から出てこなくなる。けさもサンガンペーング温泉までの道のりを往復してきたが、乗っていた客は何人だったと思う? たったの3人、90バーツだ。これでは山道を往復80分走るためのガソリン代すらまかなえないよ」

サンガンペーング行きのスィーローは午後1時ちょうどに数人の客を乗せてチアングマイ市場の前を出発し、同乗していた何人かの僧を途中の寺院に降ろして付近の村落に立ち寄りながら細い登山道を走り続けた。

サンガンペーング温泉は、エーンと付き合っていた2年前からほとんど変わっていなかった。それでもバンガローにエアコンが取り付けられるなどして宿泊料金が100バーツ値上げされ、一泊600バーツになっていた。

この1ヶ月間のペーパー作業で蓄積された疲労を一気に解消させようと、熱い温泉につかってはベッドに潜ってぐっすり眠るということを何度も繰り返した。この日はなんと16時間も寝てしまった。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。