タイの援助交際について考える その1

日本で非職業娼婦との売買春行為が「援助交際」と呼ばれるようになったのは1996年のことで、携帯電話の爆発的な普及にともなって自分の小遣いだけでは利用料金を支払えなくなった女子高校生たちの一部が売春に走ったのがはじまりという。

それから8年、タイに特別な感情を抱いている一部の日本人男性たちのあいだでは、「男女交際」や「援助交際」といった言葉が誤って使われている。

いわゆる援助交際とは、性的な快楽を必要としている男性が、あぶく銭を必要としている非職業娼婦の性的なサービスを買う行為のことだ。交際という言葉からも分かるとおり、当事者双方にとって新規の交際相手を見つけるより既存の交際相手との関係を続けた方が気楽で安心なため、関係が一度きりで終わることはほどんどない。

したがって、路上や性風俗施設などで客待ちをしている職業娼婦(街娼・ゴーゴー嬢・ソープ嬢・ホステスなど)に金を払って単発的な性的関係を持つ、いわゆる単純買春を援助交際と呼ぶのは正しくない。さらに、金銭を定期的に融通することが前提で成り立っている援助交際を、あたかも世間一般で広く行われている「男女交際」のように表現するのも誤りである(継続的な送金や仕送りで娼婦との関係を維持するのもこれにあたる)。

タイに特別な感情を抱いている一部の日本人男性たちは、買春や援助交際などの「いかがわしい行為」を別の言葉に言い換えることで真実から目を背けようと試行錯誤しているようだが、非常に見苦しいし、もし本当に「言い換えた言葉」が真実であるかのように思い込んでいるとしたらいよいよもってに救いがたい。どんな言葉に言い換えて体裁を取り繕ったところで、どうせ本質は変わらないのだから、そのままの言葉を使って事実を正確に言い表した方が、まだいくらかは行為の醜悪さが和らげられる。

バンコクにおける日本人とタイ人の男女関係は、いわゆる単純買春の域を超えていないケースがほとんどだが、それでもタイ人のあいだでは実際に本物の援助交際が行われている。ただし、非職業娼婦たる不良女子学生たちの目的は、携帯電話料金の確保を目的としている日本人学生とは異なり、(もちろん生活費の捻出でもなく)麻薬調達資金の捻出だ。

【素人タイ人女性】シロウトとはいったい何のことか?

2005.05.09

トーングロー21街路にある微妙にハイソなパブ「ソーングサルング」の薄暗い店内は午後10時、まるで日本の通勤電車のように混み合っていた。身体を少しでも動かすとすぐにほかの客とぶつかってしまうし、トイレへ行くのにもタバコの火を警戒しながら注意深く人々の壁をかき分けて進まなければならない。そんな雰囲気の店で、今晩は某有名私立大学に通っている女子学生たちとウイスキーを飲みながらタイポップスを楽しむ予定になっていた。

ある女子大生は、待ち合わせの時刻から大幅に遅れて、ひとりのタイ人中年男性とともに現れた。男の年齢は45~50歳。その女子大生は男を「自分の叔父でバンコク郊外にある工場のオーナー」と紹介していた。ところが、このふたりのスキンシップが「姪と叔父」の関係から明らかに逸脱していたため、僕たちは次第にこの友人が援助交際をしているのではないかという疑いを強めていった。

「ねー、見て見て! これ、ヤーイーだよ! とっておきの夜なんかに使うと、本当にもうサイコー!! 見ての通りここには全部で6錠あるわ。もし興味があったら1錠1,000バーツで譲ってあげるけど、どうする?」

そのクスリは大学病院の名前が書いてある処方薬の袋に入っていた。違法薬物を病院の処方薬袋に入れて持ち運ぶのは、薬物常用者なら誰でもやっているような初歩的なカモフラージュだ。とりあえずテーブルから身を乗り出して錠剤を目視したが、端から僕たちにはその真偽を確かめる術などない。でも、おそらく本物のヤーイーなんだろう。

タックスィン・チンナワット政権時代(2001-2006)の「麻薬撲滅戦争」政策が実施される2年ほど前に行われた日本人教授の調査によると、ここバンコク都内におけるヤーイーの末端価格は300〜500バーツ。この女子大生によると、最近では麻薬撲滅戦争の影響で入手が難しくなってきており、安定した調達ルートもなければ、必要なときに買える状態にもないという。

肌が白い、若くて可愛らしい有名私立大学の現役女子学生。幾ばくかの金銭を渡すことで、彼女を自由にする権利が得られるという背徳的な恍惚感は想像に難くないが、それは本来、心身両面を支配できた時に初めて得られる類いの快感であり、精神的な面を支配できなくては片手落ちにすぎない。

そんな皮肉っぽいことを考えながら、3階にある薄暗いソファー席に身を預け、ウイスキーグラス片手にタイポップスの生演奏を聴きながら、周囲の混沌とした光景を午前2時まで楽しんだ。

その女子大学生だが、現在彼氏募集中とのこと。好みは肌が白くて性格の良い、背が高くて年齢の近い男性。顔立ちや経済力、国籍は問わないという。

これまでタイの若者文化にはまったく無関心だったが、それなりに探求してみると不思議なシチュエーションをいろいろと目の当たりにできて面白い。

20040716-2今日は午前10時から文学部大講堂で催された仮面舞踊学会に出席して、聞いてもその意義を理解できるはずもない「未発見のラーマギアン(タイ仮面舞踊)とアプサラ(クメール仮面舞踊)の相違点を新たに1つ見つけた」という話を聞いてから、友人とトーングロー21街路にあるパブへ繰り出した。

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。