鳥インフルエンザ タイ人の受け止め方

タイでも鳥インフルエンザが猛威をふるっている。テレビのニュースでは、政府から全頭処分を命じられた養鶏場の主人が困り果てている姿、しばらく鶏肉を食べずに様子を見ると話す市民の声、カーオマンガイ屋台の売り子の嘆きなどが連日のように報じられている。

「朝から店を開けているのに、きょうの客はまだ2人しかいない。せっかく仕入れた鶏も売れる前に腐ってしまうわ。このままじゃ赤字よ。ほとぼりが冷めるまで休養したほうがいいのかしら」

タイ人は筋金入りの鶏好きだ。一番好きな食べ物は鶏だし、一番好きな文字も「鶏:ゴー・ガイ ก.ไก่」の「ゴー ก」。タイには鶏を暗示するジェスチャーもある。それだけにタイ国内の鶏料理市場の裾野は広く、鶏料理チェーン店もたくさんあるけれど、今回の鳥インフルエンザ騒ぎが長引けば経営が傾く事業者が相次ぐことは疑いない。

「鶏料理を食べることはリスク以外の何物でもない。わたしはまだ死にたくないわ」

この美容師の言葉がタイ人多数派の意見を代表している。報道による風評被害は深刻なレベルに達している。政府による安全宣言も信ずるに値しない。鶏料理店はどこもガラガラで、陳列棚もスカスカ。普段は若者たちでごった返しているKFCも奇妙なほど閑散としている。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。