タイ滞在2年目の国際結婚観

「もう今年のおせち料理は食べた?私のほうは大丈夫だから心配しないで。強く生きることにしたの。いまはとっても幸せよ」

突如、語学留学時代に付き合っていた元彼女のエーンから電話があった。エーンは家計難と出席日数不足で2001年にタンマサート大学からラームカムヘーング大学へ移っている。エーンは早口で一方的に近況を報告し、こちらからの質問を一切受け付けることなく一方的に会話を終わらせた。

エーンが極端に前向きになるときは、たいてい深刻な事態に陥っている。今すぐ会いに行って直接自分の目で確認したいという衝動に駆られたけれど、これがきっかけで寄りを戻して結婚するということになったら最悪だし、それにいまは新しいカノジョもいる。そう考えて、あえて「何もしない」ことを選んだ。

タイに来てから2年と2ヶ月が経った。日本人の友人たちには言えずにいるけれど、「タイ人と結婚すべきではない」という考えは依然として変わっていない。他人がどのような人生を歩もうが、自分には無関係だし、難癖をつけるつもりなど毛頭ないけれど、この日本人社会でタイ人妻が受け入れられるかどうかについては常々疑問に感じている。それどころか、むしろ「不可能だ」と断言することもできる。

タイ人と結婚するシナリオを選ぶときの条件として、僕は自分がタイまたはアメリカに永住することのいずれかを選択した場合に限定している。しかし、経済的な理由からタイに永住するわけにはいかないし、アメリカに帰化するも困難だから、必然的にタイ人女性と結婚するというシナリオはない。日本国内にアジア系の外国人に対する根強い偏見がある以上、日本に呼び寄せるのは気の毒だし、自分ひとりの努力では周囲の考えを変えることなんてできない以上、自分の配偶者を自分で守ってあげることもできない。

結婚を前提としないタイでの男女関係には、自分自身でも納得していないため、最適な行動指針を定められないでいる。

「それなら現地の女性と関わらなければいいじゃん?」

そういった主張があるのも事実だけど、それを入れられないのは僕が弱い人間だからだろうか?

さしあたって、良心に恥じない行動を心がけようと思う。

自分の行動が矛盾していることは自覚している。きっと「結婚の可能性を完全に排除しながら続ける男女交際」そのものに無理があるからだろう。

今晩は、コンドミニアムのロビー階にあるミニマートでワインとチーズ、それから大量のカクテルを買い込んで、腹がふくれて飲めなくなるまで飲み続けた。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。