タイ式結婚式

意外にも風情あるタイの結婚式。

あさ、トーングロー通りにある結婚式場「トンラックスタジオ」で催された友人の結婚式に参列した。新郎は日本人男性で、新婦は日本在住4年目のタイ人女性。今回はこの結婚式のためにタイに滞在しているという。

結婚式場に到着してまず気付いたのは新婦側親族の中国系タイ人の多さだった。それでも中国式ではなくタイ式の結婚式を挙げることにしたのには、ちょっとした事情があるという。

午前8時9分、参列者控室でモーニングコーヒーを飲みながらサンドイッチを頬張っていたところ、館内放送で会場入口に集合するように指示を受けた。会場の扉の前には9人の出家僧が着座しており、新郎新婦が僧たちの前に置かれていた鉢(バート)へ食べ物や飲み物などの供物を入れ(サイバート)、それから僧侶たちによる読経が始まった。

僧たちは読経を唱え終わるとすぐに式場から引き上げていき、代わって新郎が新婦の家へ「逆持参金」を持って練り歩く「コンマン」という儀式が始まった。

「今回の結婚式では、現金○○○万バーツと金○バーツが、新郎の○○家から新婦の○○家へ進呈されます」

日本では到底考えられないことだけど、参列者が一目見ただけで価値が分かるように現金が大きな皿の上に広げられており、司会進行役によるアナウンスまであった。逆持参金のうしろにある籠には、果物類がそれぞれ2つ1組で入っていた。

「ご参列の皆様、ぜひコンマン(逆持参金行進)にご協力ください。どうか、お手近の籠を持って行列に加わってください。一度お手に取られました駕籠は、絶対に元の位置には戻さず、そのまま必ずお持ちください。『もう疲れて持てない』なんて方はいらっしゃいませんよね?」

中国系タイ人は、タイ人であるにもかかわらず、意外にもタイの文化には無知で無頓着のようだった。このコンマンの場面でも、ひとりの中国系老婦人が一度手に取った果物が入っている籠を元の位置に戻してしまい、参列者たちを大いに驚かせた。

僕は一番重い「バナナの若木」を持って歩いた。

タイの伝統的な結婚式には二通りの持参金システムがあるという。ひとつは新婦が新郎の家へ行く「アーワーハモンコン」、もうひとつが新郎が新婦の家へ行く「ウィワーハモンコン」で、今回は新郎側の一団が一旦道路に出てから新婦が待っている結婚式場へ練り歩く「ウィワーハモンコン」の形式がとられた。

今回の結婚式の会場になったのは、バンコク都内でも比較的交通量が多いトーングロー通り(スクンウィット55街路)だった。日本在住の新郎が実際に自宅から行列を作って新婦の家へ移動するのが物理的に不可能だったため、この大通りのうち1車線を封鎖して、うしろから猛スピードで迫ってくるクルマに恐れおののきながら、奇妙なお面をかぶっているチンドン屋風の男女約10人のあとについて歩いた。行列が練り歩いた距離が30メートルしかなかったことからも分かるように、これは必要な手続きを踏むために行われた形式的なものだった。

その後、仲人を務めた地域の名士が「これをもって両家はひとつの家族となった」という内容のスピーチをして、「これをもってふたりは一つの人格となった」という言葉とともに新郎新婦が指輪交換をし、式場内にあるさまざまな部屋を移動しながら儀式が行われた。クライマックスは初夜を象徴するイベントで、寝室のベッドの上で新郎新婦がそれぞれの両親と言葉を交わしたあとに、両家の両親がシーツの上に薔薇の花びらを撒いて、そこに新郎新婦が横になった。

「お二人とも、初夜のことを思い出してください」

会場が笑いで包まれ、新郎新婦が照れ臭そうにしていた。これは「両親の同意の下で結婚した」ことを象徴する儀式だけど、すでにこの二人には子供がおり、今回の結婚式にも参列している。

一連の儀式(僧によるタンブンから初夜イベントまで)におよそ3時間を要し、その後ビュッフェ形式の昼食が振る舞われた。

なお、今回の結婚式に参列した男性はワイシャツにスラックス(ネクタイの有無は問わない, ラーマ5世時代のタイ式スーツ姿の人もいた)という出で立ちで、女性たちはお洒落なドレスが多かったけど部屋着でなければ何でもOKといった様子だった。祝儀は記名したピンク色の封筒を記帳台に出した。

タイの結婚式のわりには伝統的で格式ばった結婚式だったけれど、それでも参列者たちは指定された席にとどまる必要はなく、適当にブラブラと会場内を友人とフラついていればよいだけなので気楽だった。それでも重要な部分はきちんと押さえられており、決して安っぽくい無秩序な雰囲気でもなかった。

伝統的なタイ建築の結婚式場と、古典的なタイ音楽の生演奏が、この結婚式にさらに荘厳なものにしていた。日本で行われている一般的な結婚式より情緒があった。

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。