山田長政 王都アユッタヤーのサムライ

およそ400年前、タイへ渡ったひとりのサムライがいた。

昼食後、高架電車プローンポング駅前にある百貨店「エンポリアム」へ行って証明写真を撮り、現像までの待ち時間を利用して日本書屋「東京堂書店」で書棚を眺めながら郷愁に浸っていた。ふと、高校の世界史で学習した江戸時代初期のサムライ山田長政の生涯が気になって、伝記を買って読んでみることにした。380バーツだった(1,064円, 日本国内定価660円)。

山田長政(1590頃-1630, オークヤー・セーナーピムック)は、駿河国(現在の静岡県)沼津を治める小藩主大久保家(2万石)に仕えていたが、幕府の陰謀で1613年に主家が断絶されて浪人となった。日本が鎖国する前年の1615年にシャム(サヤーム, 現在のタイ)へ渡り、王都グルングスィーアユッタヤーにある日本人街に住んでいるサムライ兵を率いるなどして宮廷内での地位を確立し、3品官格のオークヤー(のちのプラヤー)まで昇進した。1628年に王位継承をめぐる混乱を鎮定するが、王位継承問題で遺恨を持っていた重臣たちによって辺境のリゴール総督(副王待遇, 現在のナコーンスィータンマラート県知事)に左遷された。北侵してきたパッターニー王国軍を迎撃中に負傷し、治療のときに毒を塗られて死亡した。

タイには歴史書がほとんどないため記録がほとんど残されておらず、この本もタイ史に興味を持っている読者には不満が残る内容になっているけれど、それでもタイ史に名を残したこの人物について知っておいても損はない。

その後、オフィスビル「エンポリアムタワー」2階にあるスターバックスで、この本を読んで証明写真ができあがるまでの時間を潰し、それからバイトに出かけた。

山田長政 他 / 山岡荘八著 / 講談社 / ISBN-4-06-195059-2

2件のコメント