交通事故

一週間の日本滞在を経て、バンコクに戻ってきた。

バンコク・ドーンムアング国際空港まで迎えに来てくれた日本人の友人が運転していた社用車が、午後11時27分にバイクと接触した。

ウィパーワディーラングスィット通り(片側2車線)の高速入口付近の追越車線を時速80キロで運転していたところ、前方の走行車線(別の車線)を時速40キロぐらいでフラフラと走っている110ccバイクに約30メートルのところまで接近した。友人がクラクションを鳴らしたところ、あろうことかそのバイクは逆に追越車線へ近づいてきた。

友人はクルマを中央分離帯ギリギリまで寄せて回避を試みたものの、バイクはさらに車線の上まで寄ってきて左サイドミラーに接触。バイクは転倒して助手席のドアに接触し、バイクの運転手は走行車線と追越車線の中央まで弾き飛ばされ、日本人女性観光客ふたりを乗せていた後続のタクシーに跳ねられて中央分離帯に叩き付けられた。タクシーはフロントバンパーとタイヤのアルミホールを破損し、右前方のタイヤがパンクした状態で僕たちの前に停車した。警察へ通報しようとしたところ、ちょうど交通違反の取締をしていた警官が近づいてくるのが見えた。

現場に到着した警官は、取り調べを始めることなく、ひたすら交通整理に専念していた。事故に巻き込まれたタクシーに乗っていた日本人女性観光客は、別のタクシーで目的地のプレジデントホテルへ向かった。その後、無線連絡を受けて駆けつけてきた交通警察から、負傷したバイクの運転手を乗せてウィパーワディー警察署まで出頭するように命じられた。

翌12日午前零時10分、バンコク警視庁のウィパーワディー警察署にある取調室へ通された。取調室では別の交通事故でふたりのタイ人が事情聴取を受けていたが、警察官から運転免許証を提示するように求められたところ持っていない様子だった。その間に友人は社用車のリース会社へ電話して、保険会社の担当者を寄越すように依頼した。

午前1時22分、バイクを運転していたタイ人と友人のふたりが飲酒検査のためにウィパーワディー病院へ移送されたので、その時間を利用して警察署の待合所でこの日記を書いている<ここまで、ウィパワディー警察署待合室で書く>。

午前1時45分、警察署に保険会社から電話があって、事故の経緯について簡単に説明したところ、30分後に来ると話していた。つづいて病院でアルコール検査を受けている友人から携帯に電話があり、友人によるとバイク運転手の呼気から133のアルコール反応が検出されたという。この数値がどんなものか分からないけれど、別件の交通事故で取調中だった運転手から検出されたアルコール反応が80だったので、接触したバイクを運転していたタイ人はほとんど酩酊状態だったのだろう。保険会社の職員によると、タイの道路交通法ではアルコール指数50以上で処罰の対象となり、150以上になると保険の適用が受けられなくなるという。なお今回は麻薬反応検査は行われなかった

午前2時15分、病院でアルコール検査を受けていたふたりが警察署まで戻ってきて、いよいよ本格的な事情聴取が始まった。参加者は僕のほか、クルマを運転していた友人、転倒したバイク運転手の3人だった。

バイク運転者は冒頭から偽証を始めた。僕たちがいきなり走行車線から追越車線へ車線変更したために接触したと主張している。当然、これに猛然と反論したが、バイク運転手は「そんなことはない」の一点張りで最後まで自らの誤った主張を続けていた。

いよいよ収拾がつかなくなって、警察官は僕たちに退出するように命じてバイク運転手からの証言だけを一方的に聞いた。さらに現場検証へ向かったが、タイ語が使える僕の立ち会いは拒否された。

双方の主張は最後まで折り合うことなく、後日あらためて事情聴取を行うというカタチで解散しようとしていた。しかし、バイクの運転手に修理代を支払えるだけの経済力がないこと、社用車の修理費用についてはリース会社が負担してくれることを考慮すれば、これ以上の時間を費やしても意味がないとの結論になり、事故当事者の双方が人身事故反則金の最低額400バーツを支払うことで午前4時半に警察官と合意した。

加害者と被害者との責任関係はついに明確になることなく、有耶無耶のうちにこの事故は処理された。反則金の領収書はきちんと発行された。

「彼はあまりにも貧しく、どうせ損害を補償できる金もない」

今回の交通事故は、明らかにこちらに補償を要求する権利があった。ところが警察官が丸く収めるようとしたことで、ついに正義による解決を見ることがなかった。しかも友人は、バイク運転手の主張だけが一方的に採用された調書に署名させられた。

「タイ人同士は助け合い」(コンタイチュワイガン)

タイには「常に日本人はタイ人に対して優位にある」と信じて疑わない日本人が数多くいるようだけど、そうした謝った認識は一刻も早く正したほうが良い。日本人はタイ人ではないから、タイ人と争いになったときに保護してもらえることもあまり期待できない。

ちなみに転倒して軽傷を負ったバイク運転手は飲酒運転の罪で一晩留置所に拘留されることになった。

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。