タイ語と労働

外国語だけではメシが食えない。

ヂャーオプラヤー川に面したホテル「ロイヤルオーキッドシェラトン」で朝を迎えた。朝食のビュッフェを食べてから、マーブンクローングセンターへ行こうとホテルの1階ロビーへ出てみると日本人ツアー客の一団に出くわした。

)ร้านอาหารช่างไหนค้า(らーんあはーんちゃんぐないかー“(用務員食堂はどれですか?)

妙なタイ語が聞こえると思って振り返ってみるとさっきすれ違ったばかりの日本人の一団がいて、その声は日本人女性ツアーガイドからベルボーイに向けて発せられたものだった。タイ語で表記するのが困難なほどひどい発音だったけど、このシチュエーションから )ร้านอาหารอยู่ชั้นไหนค่ะ(ラーンアーハーンチャンナイカ (食堂は何階にありますか)と聞こうとしているようだった。

いずれにしてもこの日本人女性ガイドのタイ語力ではツアー客が遭遇するかもしれない不測の事態に対応できないだろう。

タイには教育省主催のタイ語検定「ポーホック」がある。正式名称は「私立学校教員免許取得のための初等教育第6学年相当のタイ語能力検定」。つまりこの試験を合格しただけでは中学校以降に学習する歴史・経済・社会に関するテーマについて話し合うことや、公式な場面でそれなりに談笑することはできないといことだ。日本の外国語教育にたとえれば「中学校3年生で習う英語」程度の表現しかできない。

バンコクで旅行業に従事している日本人現地採用者の月給はおおむね15,000から20,000バーツ(大卒の新卒ないし職務経験3年のタイ人従業員と同程度)といわれている。いうまでもなく日本人を現地で採用している業界のなかでは賃金水準がもっとも低い。タイ語を学ぶために100万円近くも投資をした見返りがこれっぽっちかと思うとホントウに気の毒に思う。中途半端なタイ語を身につけたところでタイでの就職活動では優位に立てない。

そんな現地採用のツアーガイドたちは、ツアー客を連れて行った土産物屋から紹介料を受け取ったり、夜の私的ツアーを組んで現地での支払いを代行するときにコッソリ上前を撥ねるなどして生活の足しにしているという。

「言語は道具にすぎない」

このフレーズは月並みの表現だけど事実を過不足なく正確に言い表していると思う。本当に外国語だけで食べていくなら同時通訳ができるぐらい語学力はあって当然だし現地のさまざまな事情にも精通している必要がある。

その後、マーブンクローングセンターへ行って友人が後援会長をしている市長候補の選挙ポスターを印刷するための見積をとってから、ホテル「ロイヤルオーキッドシェラトン」にある上級客室宿泊者向けのラウンジで無料ビールを楽しみ、高架電車アソーク駅前にあるホテル Westin Grande Sukhumvit 8階の日本料理店「吉左右」で友人から寿司の食べ放題をごちそうになった。