バンコクの起業家

これまでバンコクで何人もの日本人起業志望者に会ってきたけれど、そのたびにずさんな事業計画に驚かされてきた。どうも発展途上国に来れば先進国の起業家は必ず成功するとでも勘違いしているようだ。頼むからもう少し現実を直視してほしい。

さて、ここで問題です。先進国のアホと発展途上国の事業家ではどちらのほうが賢いでしょう?

タイの法制度は想像以上にややこしい。タイ語で書かれている法律や通達文が分からなければ何も申請できない。しかもタイのお役所仕事はグローバルスタンダードからかけ離れていて日本人的な価値観では理解できないことばかり。言葉の壁以前の問題として賄賂を払わなければ申請が理由なく却下されることだってある。バンコクに住んでいる日本人を頼って何とかしようとした結果、逆にカネをだまし取られてしまうケースも少なくない。そんなハンディーキャップを山のように抱えている土地でどうして日本より簡単に起業できるというのか。

バンコクにおける日本人社会の市場規模やタイ人の消費動向を完全に無視して、自分の妄想シミュレーションだけで事業計画を立ててしまうのだから本当にビックリする。それでよく不安にならないのかと不思議でならない。

タイで事業を興すのをタイのソープランドでオンナノコを買うのと同じくらい簡単だと信じている日本人起業志望者の多さはホントウに尋常ではない。

学部生だった頃、大学の公開講座「ベンチャー企業経営論」で50歳くらいの男性が熱心に「自殺幇助ビジネス」を始めるにあたっての抱負語っていた。思いつきだけで事業を興すのは経営学的には下策のうちの下策だけど、それ以前の問題として、どうして法律による制約について無関心でいられるのか不思議でならなかった。

昨晩、この日記を通じて知り合った日本人青年起業家と寿司屋へ行った。そこで説明を受けた事業計画は珍しく成功の見込みがあった。大きな需要がある市場で創業当初から比較優位を確立するという戦略はなかなか魅力的だった。

その事業の今後に興味を持ち、しかもちょうど資金面で困っていることもあって、あしたから試験的に時給400バーツで雇ってもらうことになった。

夜、その起業家のオフィスを見せてもらって、その友人たちとの忘年会に参加した。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。