タイ人と政治史

夜、プラトゥーナーム交差点ちかくの電脳街「パンティッププラザ」へ行ってから、サヤームスクウェアにあるフットボールバー「フォーバー」でグルングテープ大の学生とビールのピッチャーを3杯空けた。学生の父親は内務省統治局の高官らしい。

テレビ時代劇「二世界放浪記」の影響で久々にタイの中等学校の歴史教科書を手にとって政治史の解説部分を読み返している。

世界の歴史シリーズ6 タイの歴史 タイ高校社会科教科書
柿崎千代 訳(中央大学政策文化総合研究所監修)
明石書店 発行(2002年)
ISBN 4-7503-1555-9
2,800円
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エーンはタンマサート大学でマスコミ学を専攻していたが政治・経済・歴史の分野には無関心で、この手の話題になると決まって両耳を塞いで首を横に振る。タイ語の発音の良さには助けられているが、そんなことでマスコミの仕事ができるかの心配になる。エーン自身、「マスコミなんて興味もないし大キライ!」と話している。ためしに陸軍大将より上位の軍階級について尋ねても「し~~らない」という答えが返ってきた。

まったく同じ質問をしたところ、グルングテープ大の学生は「それは国軍最高司令官だよ」と答えた。最高司令官は軍階級ではなく役職だ。

タイの近代史はクーデターと軍事政権の歴史でもあるのに、どうして「元帥」の階級を知らないのか。タイ軍事史上、元帥の階級を手にした軍人は17人おり、首相になった元帥も3人いる。

きのうの日記で取り上げた「タイ語古典的表現」についても尋ねてみた。 อะไร(アライ)の古典的表現を、エーンは สิ่งใด(スィングダイ)、この学生は อะไร(アライ)と答えた。帰宅後に歴史映画「スリヨータイ」を見て調べた結果、正解は อันใด(アンダイ)だった。

この教科書を読んで日本人として不思議に思うのは、社会史や文化史の比重が大きく、政治史に関する解説部分が極端に少ないことだ。高校の世界史Aより内容が薄い。こんな社会科教育でどうして民主主義について正しく理解することができようか。

 

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。