ヂュラーロンゴーン大学浸水事件

午前8時、未明から雷をともなって降り続いた豪雨はすでに小降りになっていた。おととい傘をなくしてしまったためクリアファイルをかざしてペッブリー18街路にあるアパートを出た。ところがセーンセープ運河が洪水しているのかペッブリー18街路全域が20cmの浸水をしていたため、アパート裏にある高さ2.5mの壁を乗り越えショッピングセンターの駐車場を通ってパヤータイ通りまで出た。

高架電車ラーチャテーウィー駅前でタクシーを待ってみたけれど、雨天の通勤時間とあって空車がなく、やむなくで三輪バイクタクシーでヂュラーロンゴーン大学へ向かった。

パヤータイ通りはマーブンクローングセンター前で25センチ程度浸水していた。ヂュラーロンゴーン大学の各学部をはじめ近隣の中等学校に通っている学生たちは脱いだ革靴を手に持って歩道を歩いていた。路線バスがものすごい水しぶきを上げながらその横を通り過ぎる。三輪バイクタクシーには窓がないため終始ヒヤヒヤものだった。

ヂュラーロンゴーン大学構内の浸水はさらに深刻だった。三輪バイクタクシーの後部客席にまで流れ込んできた。普段なら30バーツのところ40バーツ払って文学部ボロムマラーチャグマーリー館へダッシュした。その後、けたたましいトゥクトゥクの排気音が次第にフェードアウトしていくのが聞こえた。ついにエンジンの中に水でも入ったか?

ボロムマラーチャグマーリー館7階カフェテリアから朝食のクロワッサンをかじりコーヒーをすすりながら構内一帯の浸水被害を眺めた。三輪バイクタクシーは僕を降ろした場所から一向に移動する気配がない。

午前10時、授業が始まると男性講師がここに来るまでの苦難について語り始めた。

「オーマイガッ! 私のシャネルのハイヒールがっ!!!」

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。