スティサーン通りの歓楽街

放課後、マーブンクローングセンター6階にある Black Canyon Coffee で友人たちとビールを飲みタバコをふかしていたところ、「つぎ、どこ行こうか?」という話題になった。

この時期、ゴールデンウイークの真っ只中とあって日本から友人たちが遊びに来ている。今晩のメンバーは日本人4+タイ人1だった。 Go Go Bar やコーヒーショップなどの風俗店はタイ人の立ち入りを禁止しているところが多いため、スティサーンウィニッヂャイ通りにあるタイ人向けの歓楽街へ行くことになった。

スティサーンウィニッヂャイ6小街路でタクシーから降りると、そこには外国人向けの歓楽街であるパッポング通りやスクンウィット通りとは似ても似つかない怪しさがあった。たくさんのカラオケスナックや Go Go Bar がトゥックテオ(タイ式多層長屋)の1階で営業している。こんな下町情緒あふれるイケてない民家では、どうやってもオンナを楽しもうという気分になれない。

とあるトゥックテオの扉を開けて店内へ足を踏み入れると、そこには薄気味悪い奥行き7メートルの小さなフロアがあり、老朽化著しいソファが左右の壁に沿って2列に並んでいた。ほかに客はいなかった。ホステスたちの年齢は27~35歳で、これでは「廃屋でオバさんと酒を飲む会」になってしまう。

タイ人の男子学生は「ここのオンナたちゼッタイにエイズだぜ?気をつけた方が良い」と忠告してきた。

一刻も早く店を出たいと学生に伝えて同意を求めると「いま店を出たら何が不満なのかと追求されて面倒になる。せめてあと1時間半は我慢してくれ」と言われて却下された。とうとう耐えきれずにひとり店を出てスティサーンウィニッヂャイ通りを散策したところ、ほかの店がどこも華やかに見えた。

店を出て30分ぐらい経ったころ、タイ人の男子学生から「もうすぐ店を出るから待っててくれ」という電話があった。さらに30分が経ち、ほかのメンバーたちと合流したときに割り勘料金を徴収された。ひとり500バーツで、内訳はホステス指名料200バーツ+酒代300バーツ。最初の話ではホステス同席料金30分60バーツという話で指名できるほどホステスの人数もいなかったのに、指名料として200バーツも取られたのにはどうしても納得がいかない。

みんなグッタリしていた。きっと誰もが「金返せ」と思っていたはず。

その後、スクンウィット4小街路にあるナーナーエンターテインメントプラザへ日本人2+タイ人1で出かけたが、さっきの店で受けたダメージが大きすぎて午前2時の閉店前に解散した。

げに恐ろしきはスティサンの妖怪。

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ケイイチ
バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。